高尿酸血症を合併しやすい因子として知られている飲酒習慣, 肥満, 高トリグリセライド血症,高コレステロール血症,および高血圧症は互いに併存しやすい傾向があるので,各因子が併存した場合,高尿酸血症の頻度または血清尿酸の平均値にどのような影響がみられるかについて検討した.対象は各種企業の男性従業員5,094例であるが,この中から高血糖(空腹時110mg/dl以上),降圧剤使用,高クレアチニン血症(1.3mg/dl以上)のうち,少なくとも1つを有する例(440例)は併存効果の分析の対象からは除外し,残りの4,654例について検討した.1)各因子の併存の実態:全例(4,654例)中1,304例(28.0%)は因子を1つも有せず, 1,428例(30.7%)は2つ以上の因子が併存していた. これに対し, 高尿酸血症(7.1mg/dl以上)の例(560例)では因子を1つも有しないものは84例(15.0%),因子を2 つ以上有する例は300例(53.6%)であった. 従って高尿酸血症例では,全例に比べて因子を有しない例が少なく, 因子を2つ以上有する例が多かった.2)併存する因子の数と高尿酸血症の頻度との関係:因子を1つも有しない群の高尿酸血症の頻度は6.4%,1因子の群では9.2%,2因子では17.2%,3因子27.3% ,4因子39.8%,5因子42.9%で,併存する因子の数が多くなるほど,高尿酸血症の頻度も高くなった.そして5因子併存例の高尿酸血症の頻度は,1因子を有する例に比べて約5 倍に達した.3)併存する因子の数と血清尿酸値との関係:因子を1つも有しない例の血清尿酸の平均値は5.46mg/dl,因子を1つだけ有する例では5.65mg/dl,2因子併存例では5.98mg/dl,3因子では6.31mg/dl,4因子では6.50mg/dl,5因子6.69mg/dlで,併存因子の数が多くなるほど血清尿酸値も高くなる傾向がみられた.そして5因子併存例の血清尿酸値は1因子を有する例に比べて1.04mg/dl高かった.なお,今回併存効果の分析の対象から除外した例のうち,高血糖のみを有する例では因子を1つも有しない例に比べて,血清尿酸値は低く,高尿酸血症例は1例もみられなかった.また降圧剤使用例および高クレアチニン血症例では,2因子併存例と3因子併存例の中間の値を示した.
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