国際ジェンダー学会誌
Online ISSN : 2434-0014
Print ISSN : 1348-7337
18 巻
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  • 日本で暮らす留学生と技能実習生の妊娠に関する一考察
    田中 雅子
    2020 年 18 巻 p. 64-85
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/12/25
    ジャーナル オープンアクセス
    日本で暮らす移民女性のうち増加が著しい留学生や技能実習生の多くは,15歳から49歳までの生殖年齢層である。しかし,その中には「妊娠してはならない」,「妊娠したら帰国させる」と警告を受けている人もいる。解雇や退学処分を恐れて,自己服薬による中絶を試みたり,行き場がなく在留資格を失った状態で出産したり,帰国後も子どもの養育上の困難に直面するなど,彼女たちの心身の負担は大きい。本研究は,文献調査のほか支援者と当事者への聞き取りから,留学生と技能実習生の妊娠をめぐる課題を明らかにすることを目的とする。セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR)や移民に関する国際規範と日本政府の施策には乖離がある。移民女性のうち,技能実習生は労働関係の法令で守られるが,その運用は限定的である。留学生が妊娠し,教職員に早めに相談しないで欠席が続くと退学に追い込まれることがある。妊娠により休学した留学生を在留資格の取り消しから除外することも明文化されていない。彼女たちが妊娠しやすい背景のひとつに,出身国と日本で用いられている避妊の選択肢の違いがある。移民女性のSRHRをめぐる予備的考察から,日本で暮らす女性全般に共通する課題を探り,今後求められる調査を展望する。
  • 鈴木 育美
    2020 年 18 巻 p. 86-106
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/12/25
    ジャーナル オープンアクセス
    女子刑務所において女性刑務官の早期離職率が問題になっている。本研究では,女性刑務官の育成モデル作成に必要な要因の検討につなげるために,刑務官を続ける女性が,早期に離職することなく,女性刑務官としてのやりがいをどのように見出してきたのかその過程を女性刑務官自身の視点から検討した。 研究方法として,女子刑務所で勤務する女性刑務官5名を対象に個別インタビューによる半構造化面接を実施し,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて逐語データの分析を行った。 分析結果から,24個の概念が生成され,概念間の関係性から5個のカテゴリーに収斂され,女性刑務官としてのやりがいを見出すまでのプロセスには,4つの段階のあることが明らかにされた。こうしたプロセスを通じて,女子刑務所に採用された女性は,生涯的な職業として刑務官を継続できる人生設計の見通しを持つことができれば,早期に離職することなく,専門職としての役割を発揮できる処遇力の高い女性刑務官として育成されることが示唆された。
  • フランスとスウェーデンにおけるジェンダー平等の歩み
    三枝 麻由美
    2020 年 18 巻 p. 107-124
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/12/25
    ジャーナル オープンアクセス
    近年,ジェンダー平等推進の手法が,均等待遇からポジティブ・アクションやジェンダー主流化にシフトしている。その背景には,一向に埋まらないジェンダー格差に対して,もっと抜本的な手法が必要だと主張する女性たちの声がある。本稿はジェンダー平等推進に向けたアプローチの変容を示すため,近年注目されるポジティブ・アクションとジェンダー主流化の効果や課題について考察した。この目的に接近するための具体例として,フランスとスウェーデンのジェンダー平等の歩みを取り上げた。調査方法としては,フランスとスウェーデンにおけるジェンダー平等社会への社会変容を包括的に理解するために,文献調査および現地における半構造化インタビュー調査を行なった。 フランスは法的拘束力を伴ったポジティブ・アクションを積極的に多用したことにより,ジェンダー平等後進国からジェンダー平等先進国に今日変容を遂げている。他方スウェーデンは1970年代から均等法を整備し,女性に対する差別行為をジェンダー平等オンブズマンによって取り締まり,政治におけるポジティブ・アクションを主要政党が徹底したことにより,他国に先駆けてジェンダー平等先進国となった。近年はジェンダー主流化政策に舵を切っているが,スウェーデンのジェンダー平等の歩みは停滞している。その要因として,ジェンダー主流化の実践の難しさやその効果の見えづらさがある。
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