乳腺甲状腺超音波医学
Online ISSN : 2759-5013
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最新号
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原著
  • 山部 淳子, 後藤 由香, 古谷 悠子, 大津 理恵, 福田 護
    2024 年 13 巻 3 号 p. 1-5
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/08/05
    ジャーナル フリー
     【目的】画像誘導下生検術時に挿入する小さな金属の乳房組織マーカー(マーカー)は複数種類が使用されている.そこで当施設で使用している4種類のマーカーについて超音波(Ultrasound: US)における視認性を後方視的に比較した.
     【対象と方法】対象は2016年4月から2021年11月にマンモグラフィガイド下吸引式組織生検によりマーカーを挿入し,かつ対象期間内に診療目的で乳房US 検査を施行した症例である.各マーカーのUS視認性を認定技師4名で4段階にスコア化し,視認性スコアの平均をSteel-Dwass 検定で比較した.
     【結果と考察】対象症例は101例(年齢範囲:31から79歳,中央値:50歳)で,マーカーのスコアの平均はコルク型2.5点(34例),砂時計型1.5点(14例),リボン型0.8点(36例),バネ型2.8点(17例)でバネ型とコルク型は砂時計型とリボン型と比較し,有意に視認性が高かった(p <0.05).不均質な乳腺組織内ではマーカーと生体内の構造物の区別がつかないことも多く,無エコーや音響陰影など,生体内の構造物とは明らかに異なるUS 像の描出が視認性向上には重要な因子であることがわかった.
     【結論】生検後に乳房に留置したマーカーの視認性は,バネ型とコルク型が砂時計型およびリボン型よりも良好であった.無エコーと音響陰影の描出の有無が視認性に関与した.
症例報告
  • 小暮 洋美, 今井 美希, 岡野 真由子, 後藤 文彦, 室屋 充明, 澤田 晃暢
    2024 年 13 巻 3 号 p. 6-11
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/08/05
    ジャーナル フリー
    アポクリン分化を伴う非浸潤性乳管癌は稀な疾患であるが,今回3例経験したので報告する.【症例1】60代女性.マンモグラフィ検査(MG)で右乳房に微小円形石灰化と局所性非対称性陰影を認めた.超音波検査(US)では,右乳房に低エコー域を認め非浸潤性乳管癌(DCIS)を疑ったが,針生検(CNB)では良悪性の鑑別困難であった.6か月後のUS では,前回と変化はなかった.再度のCNB による診断と手術を経て,アポクリン分化を伴うDCIS と診断した.【症例2】80代女性.MG では,右乳房にFAD と集簇性微小円形 石灰化,左乳房は腫瘤と多型性石灰化を認めた.US では,右乳房に低エコー域を認め,左乳房には低エコー腫瘤を認めた.CNB による診断と手術を経て,右乳房の病変はアポクリン分化を伴うDCIS,左乳房腫瘤は浸潤性乳管癌と診断した.【症例3】50代女性.前医で左乳房に腫瘤が認められた.初回と8か月後のUS では悪性を疑ったが,初診時と経過観察中に行った計3回の吸引式組織生検とCNB では悪性の断定に至らなかった.これまでの画像診断と病理組織診断の結果を総合的に判断して,乳癌を疑うと診断しProbe lumpectomy を施行,アポクリン分化を伴うDCIS と診断した.全例術前の病理組織診断では診断に苦慮したが,Multi modality での評価では一貫して悪性を疑い,非常に有用であった.
技術報告
  • 小穴 菜緒美, 桜井 正児, 河本 敦夫, 鶴岡 雅彦, 松原 馨, 小柳 紀子, 宮本 淑子, 高橋 智里, 遠藤 登喜子, 中島 一毅
    2024 年 13 巻 3 号 p. 12-18
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/08/05
    ジャーナル フリー
     超音波診断装置は緩徐に劣化が進行し,劣化があっても各種パラメーターを駆使して画像が作られる近年の超音波画像からは画像異常に気付くことが難しい.日本乳腺甲状腺超音波医学会ファントム部会では体表超音波画像の客観的な精度管理を行うことを目的としてファントムの開発を行い,2021年11月に日常点検用体表超音波精度管理ファントムUS-4B が完成した.常に同一条件で定期的にファントムを撮像し,ファントム画像に変化がなければ安心して日常の検査を行うことができる.経時的画像劣化の管理を判断するための簡便なツールであるが,正しい使用目的,方法と評価法を習熟していることが大変重要である.
     精度管理ファントムの使用目的や使用上の注意点についての述べ,これまでファントム部会で検討してきた実際の精度管理方法について報告する.
JABTS50/教育委員会企画「乳房」 『豊胸術後(美容目的)の乳房画像について学ぼう』
  • 森田 孝子
    2024 年 13 巻 3 号 p. 20-26
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/08/05
    ジャーナル フリー
     脂肪注入は,乳房豊胸術の様々な方法の中で長年ひとつの選択肢として行われており,乳がん検診および精密検査で少なからず経験する.注入された時期,注入の仕方により様々なマンモグラフィ,超音波所見を呈する.検診時に本人の申告がない場合もあり,不必要な精密検査依頼をしてしまう可能性もある.近年,乳がん術後の形成術の進歩により,温存術後の残存乳腺による形成術や,乳房切除後の脂肪幹細胞注入による豊胸術後の検査を実施することもある.脂肪壊死の状況により,病変の可能性や局所再発かどうか難しい場合もあり,本稿では,脂肪注入後あるいは乳房形成・再建後の経時的な変化のある画像を提示し,注意喚起とした.
  • 五味 直哉
    2024 年 13 巻 3 号 p. 27-32
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/08/05
    ジャーナル フリー
     非吸収性充填剤であるアクアフィリングは1990年頃から口唇,顔面,乳房の充填剤として広く用いられてきた.豊胸術に用いられたアクアフィリングは乳房内では境界明瞭な極低エコー域,不均一低エコー域として認められる.マンモグラフィでは高濃度域,MRI ではT2強調画像では高信号,T1強調画像では低信号域として認められる.注入範囲,胸筋,腫瘤との関係の詳細な評価にはMRI の有用性が高い.
JABTS50/プログラム委員会企画 『甲状腺専門病院での超音波魂の継承~超音波検査担当者の育成』
  • 栗本 美幸, 衞藤 美佐子, 西嶋 由衣, 檜垣 直幸, 村上 司
    2024 年 13 巻 3 号 p. 34-36
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/08/05
    ジャーナル フリー
     超音波検査はプローブの持ち方や所見のとらえ方など主観的な要素が多く,研修時にも指導者によって差が出やすいと考える.また,研修終了後のレベルアップの方法にも苦慮する.当院では基本的に1人の研修者を1人の指導者が担当しているが,指導者による差ができるだけないよう,チェックシートや研修記録を部門全員で共有しながら研修を行っている.指導者が不在の場合でも,代わりの指導者が研修の進捗状況を確認することができる.
     研修終了後のフォローアップには,自分の報告した検査所見についてアドバイスをもらったり,稀な症例を共有するための「症例ノート」を活用し,手術症例を対象とした正診率・不一致率を調査し,勉強会を開催している.
  • 猪俣 啓子, 岩 朋子, 進藤 久和, 佐藤 伸也, 山下 弘幸
    2024 年 13 巻 3 号 p. 37-41
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/08/05
    ジャーナル フリー
     当院は病床数38床と小規模ながら,年間15,800件超の超音波検査を5名の技師で行っている.超音波検査担当者の育成研修では研修項目や研修期間を設定し,指導技師が進捗状況を定期的に確認しながら研修対象技師とのコミュニケーションツールとして活用している.臨床検査科の8名のスタッフが外来診療の状況に対応するためには柔軟にジョブ・ローテーションを行う必要があるため,全スタッフが複数の検査技術を習得する取り組みを計画的に行っている.甲状腺専門病院において複数業務をフレキシブルにローテーションして習得する知識と技術は,対象となる疾患を多角的な視点で理解,解釈する能力の育成に繋がると考える.
  • 古田 真理子, 天野 高志, 北川 亘, 伊藤 公一
    2024 年 13 巻 3 号 p. 42-44
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/08/05
    ジャーナル フリー
     甲状腺専門病院における超音波検査担当者に求められることは,臨床医のニーズに答えた検査結果を提供し,甲状腺患者診療の一助となることである.今回,どのように超音波担当者のトレーニングを行っているか,また知識技術を継承するために取り組んでいる具体的な手法を紹介する.超音波検査の技術は言語化できないコツ,技を継承していくことが課題である.そのためには暗黙知(コツ,技)を表出化(手本を見せたり言葉にする)し共有することが大切である.
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