中小企業会計研究
Online ISSN : 2435-8789
Print ISSN : 2189-650X
2022 巻, 8 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 河崎 照行
    2022 年 2022 巻 8 号 p. 1
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/10
    ジャーナル オープンアクセス
  • 菅原 智, 加納 慶太
    2022 年 2022 巻 8 号 p. 2-13
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/10
    ジャーナル オープンアクセス

     本研究は,クラウド会計採用に関する中小企業経営者の意識調査と採用決定に影響を及ぼ す要因を明らかにすることを目的としている。中小企業経営者のクラウド会計に対する意識について, 1)クラウド会計の機能の効果,2)アクセシビリティー,3)コスト効率性,4)経営参画,5)堅牢性 の観点からアンケート調査を実施し,定量的データを収集した。兵庫県中小企業家同友会の会員である 中小企業経営者からデータを収集し,合計で 34 件の回答を得た。データは,クラウド会計を導入して いる中小企業(クラウド企業)と導入していない中小企業(非クラウド企業)に分類し,t検定による 分析手法を用いて統計比較を実施した。その結果,以下のような知見が得られた。1)中小企業経営者 がクラウド会計の採用を決定するかどうかは,クラウド会計の機能についての理解に依拠している。す なわち,クラウド会計の機能が会社のニーズに合致していると考えれば導入を決定し,そうでない場合 はその逆となる。しかし,非クラウド企業の経営者は,クラウド会計の機能を知らずに導入しないとい う判断を行っている傾向があることも理解できた。2)本調査に参加した中小企業経営者のほぼ全員が, クラウド会計によってユーザがさまざまな財務データに容易にアクセスできることを高く評価してい た。しかし,クラウド会計を利用する半数が会社のデスクトップ型パソコンからアクセスしていること がわかった。つまり,クラウド会計導入によるアクセシビリティーの優位性が存在するにもかかわらず 有効に活用されていない可能性が高いということである。3)クラウド会計の導入によって,従業員の 経営活動への参画が促進されるという事実は見いだせなかった。この点については,補足調査の定量的 な回答やインタビューから,クラウド会計を利用した会計システムの多様なカスタマイズ設定に焦点を 当て更なる研究が必要であることが示唆された。

     これらの結果は,中小企業経営者におけるクラウド会計の導入と,その導入の意思決定に影響を与え るいくつかの重要な要因に関する新しい洞察を提供するものである。さらにこの結果は,会計専門家, 監査法人,税務当局,基準設定主体が,より良いコミュニケーションを構築するための一助となるであ ろう。

  • ―会計のDX化と記帳の重要性に着目して―
    星野 有理子
    2022 年 2022 巻 8 号 p. 14-23
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/10
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     本稿では,旧商法および現行会社法における会計の目的の変化が中小会社に与える影響に ついて明らかにし,昨今進展する会計DXとの関わりについて考察することを目的とする。旧商法では 多数の利害関係者のいる大会社を基本形としており,債権者保護の考え方に重きが置かれていた。現行 会社法では利害関係者のほとんどいない中小会社を基本形としており,利害関係者に対する情報提供機 能についても同様に重視されるようになった。このような会社の基本形が変化することによる会計の目 的の変化に関して,中小会社では資金調達や取引先の拡大に資するための情報提供が重視されるように なりながらも,債権者保護の要請は依然として存在している。

     近年は会計DXの進展に伴う諸問題に関する議論が多くなされている。かつて電算機会計が普及した ときには,作成された計算書類等の品質の是非が課題とされていた。これに類似した問題が,時代を経 ても唱えられており,AIやAIを操作する人間の不正防止や,会計処理の一連が自動化することによる 処理過程のブラックボックス化などがその一例としてあげられる。また,商業帳簿は訴訟に際する証拠 力があることからその品質が損なわれてはいけない。したがって,特に中小会社の場合,会計の基礎に 立ち返ることが必要であると考えられ,今後は計算書類に対する記帳の重要性が更に増していくものと 予想される。

  • 成川 正晃
    2022 年 2022 巻 8 号 p. 24-27
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/10
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  • ―文化的視座からのアプローチ―
    平賀 正剛
    2022 年 2022 巻 8 号 p. 28-31
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/10
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  • 飛田 努
    2022 年 2022 巻 8 号 p. 32-44
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/10
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     本稿は,筆者が2021年5月に上梓した著書『経営管理システムをデザインする―中小企 業における管理会計実践の分析―』(中央経済社刊。以下,本書と略記する)の概略を述べるとともに, そこから明らかになった研究課題を示すものである。

     本書では中小企業における管理会計実践を明らかにするために,「デザイン」,とりわけ情報デザイン に関する議論を基礎として,経営管理システム(Management Control System:以下,MCSと略記する) やMCSを主として構成する管理会計システムがいかにして経営者によって設計されるかという視点を 導入することとした。とりわけ,経営者と組織成員との間にある概念ギャップを埋めるために,MCS や管理会計システムがどのように機能しているのかを明らかにしようとした。

     以上から,MCSのデザインは経営者が市場での競争状況や企業内部での進捗状況を把握するだけで なく,そのデザインによって経営者が見えたものを経営者自身がどのように認識するのかという意味で 経営者の思考に大きく影響を及ぼす可能性があることを示唆した。また,今後の研究課題として,MCS が持つフィードバック機能は中長期的な企業の存続可能性,企業経営者の思考に影響を与える可能性が あり得るとともに,MCSが経営者(創業者あるいは事業承継者)の企業家精神(Entrepreneurship)に 影響を及ぼし,新規事業開発や次期以降の戦略,計画に影響を及ぼす可能性があるためさらなる調査研 究の必要性を示唆している。

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