本研究の目的は,乳児の排泄をめぐる様々な状況を保育者が楽しむことができる理由を明らかにすることで,保育者が乳児に寄り添いながら排泄の自立の道のりを共に歩むための示唆を得ることである.50 個のエピソードを分析した結果,保育者が乳児の排泄の自立を楽しむことができる理由として,「驚き」「発見」「喜び」があることが明らかになった.「驚き」とは,乳児が尿や便が出てくるところを知らなかったことに保育者が驚いたり,男児が排尿後に紙を欲しがったり,女児が立って排泄しようとしたりすることに保育者が驚いたというものである.「発見」とは,乳児がトイレに座らなかったり逃げ回ったりするのは,排泄の仕方がわからない葛藤から起こる姿であることを保育者が発見したというものである.「喜び」とは,乳児にとってトイレでの排泄は大変な道のりであるだけに,やり遂げた喜びは大きく,保育者も共に喜んだというものである.本研究の結果から,次の示唆を得ることができる.第一に,乳児が初めてトイレで排泄をするときの気持ちや状態を知ることで,保育者は乳児に寄り添うことができる.第二に,排泄の自立の過程で,乳児が試行錯誤し葛藤していることを知ることで,保育者は彼(女)らの気持ちを理解することができる.第三に,保育者が排泄の自立に寄り添うためには,愛着形成が必要である.したがって排泄のときだけではなく,普段から乳児と信頼関係を築くことが重要になる.
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