日本社会福祉マネジメント学会誌
Online ISSN : 2436-4061
3 巻
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 齊藤 友子
    2023 年3 巻 p. 4-17
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    保育施設で働く保育従事者(以下保育従事者)の基本属性・勤務状況, 職場のストレス要因,及び精神健康の関連を明らかにするために, 1213名の職員に横断的質問紙調査を行い, 610名(51.8%)の回答を分析した. 保育従事者には, 勤務年数5年未満の層と, 10年以上の層が多く, 収入水準は一般労働者と比べ低めであった. 年齢が若いほど量的負荷が大で, 年齢が高くなるにつれ, 勤務時間が長かったが, 施設形態は, 職場のストレス要因と関連がなかった. 多変量解析の結果, 精神的不調者の割合は新卒及び継続者で, 勤務時間が長いほど, 関連は高かったが, 他の基本属性や勤務状況とは関連がなかった. 精神的不調のリスク要因は, 上記の他に, 仕事の「量的負担」が1より高く, 「適性度」「満足度」が1より低かった. この結果は仕事の要求度-コントロール-社会的支援モデルと一致する. 今後は, 一般労働者のストレスマネジメント等を参考に, 保育従事者の精神健康改善を図っていく必要がある.
  • 貞松 成, 中山 奈保子
    2023 年3 巻 p. 18-31
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では, 認可保育所に勤務する3歳児クラスの担任保育者への聞き取り調査を通して,保育者の気になる子どもの範囲を明確にすることを試みた. 担任保育者らが受け持つクラス全員の発達記録を分析して作成した発達分析表をもとに, 気になる子どもと気にならない子どもの違いを調査した結果, 気になる子どもは, クラス全体の平均発達から概ね6ヶ月以上の遅れが確認され, 特に言葉の領域における遅れが顕著であった. さらに, ADHDなどの発達障害傾向であったり, 自傷行為などの問題行動を取ったりすることで集団に入ることができない子どもも気になる子どもとして認識していた. 一方, 発達面において遅れがある子どもであっても,成長が見られることで集団に入る見通しを立てることができたり, 保育者の加配によって保育が個別に提供されていたりする子どもは気になる子どもとして認識していなかった.
  • 渡邉 天海, 金井 智恵子
    2023 年3 巻 p. 32-39
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    幼児の学習や活動に対する動機づけを高めるために, 有能感を向上させることに着目した. 本研究では, 幼児期の子どもを対象として, 有能感および社会的受容感へのほめ合う活動を通じて, 影響について検討した. 調査対象は, 保育所に通園する年長児であり, 幼児一人ひとりに対して, クラスの友達から良いところを発表するほめ合う活動を行い, 有能感の向上を図った. その結果, ほめ合う活動あり群では, 全体・男子において「学習有能感」「運動有能感」, 全体・男子・女子において「友達からの受容感」, ほめ合う活動なし群では,全体において「友達からの受容感」に有意差が認められた. 本研究により, 保育所におけるほめ合う活動により, 幼児期の子どもの有能感を向上させることで, 主体的な課題意欲につながる可能性がある.
  • 藤後 悦子, 井梅 由美子, 大橋 恵
    2023 年3 巻 p. 40-52
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    親は, 子どもの可能性を広げようと子どもの習い事に熱心である. この傾向は世界各国に共通してみられるが, ややもすれば子どもに勝利や優越を求めるあまり, 親は子どもをコントロールしようとしてしまう. そこで親教育の一環として, 筆者らが作成した子育て絵本を通して, 親の勝利至上主義や過剰な支配的意識を弱めることを目的とした介入を行った. 支配的な子育ては, 多くの国でも問題として挙がっているため, 学歴志向が高く習い事も盛んである中国と日本, スポーツ立国でありスポーツの習い事が盛んなアメリカ, 芸術的な習い事や総合的地域スポーツが盛んであるドイツを取り上げ, 子どもの習い事に対する勝利至上主義や支配的意識の違いと絵本による価値観の変容を明らかにすることとした. その結果, 絵本により親の支配的意識は全ての国において低くなり, 勝利至上主義は中国を除く3か国で低くなり, 絵本による親教育の一定の効果が示された.
  • 設置・運営形態による特徴
    太田 研, 和田 一郎, 鈴木 勲, 仙田 考
    2023 年3 巻 p. 53-66
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    放課後児童クラブにおける危機管理マニュアルの活用は, 量的に拡大しているものの, 質的な向上をもたらす要因については不明なままである. 危機管理の質の向上のためにも, マニュアルの活用状況に関する実態を明らかにする必要がある. 本研究の目的は, 放課後児童クラブにおける危機管理マニュアルの活用状況について,設置・運営形態ごとの特徴をインタビュー調査により探索的に検討することであった. 対象者は, 放課後児童クラブの管理者や主任, 支援員の計18名であった. インタビュー調査により, マニュアルの記載項目, 活用状況, 効果, 懸念事項などを聴取した. 対象者の回答について計量テキスト分析を行った. 具体的には, 頻出語を用いた共起ネットワークと設置 ・ 運営形態ごとの課題を分析するために対応分析を行った. その結果, 公立公営の施設では, 事故への対応や連絡先, 不審者対応, 避難場所, 保護者への引き渡しといった複数の項目をマニュアルに設け, 訓練に活用することで, 職員が共通した行動をとれるようにしていた. また, 自治体との連携が語られ, 事故報告のほかにもマニュアルの修正についても相談する事例があった. 一方, 民立民営の施設では, 避難訓練での活用 が共通して語られた. 自治体と連携して安全対策を講じるというよりも, 管理者や職員の個人的な自助努力に依存する傾向があった. 全ての利用児童が安全・安心に生活できる危機管理マニュアルの在り方を検討した.
  • 二宮 祐子
    2023 年3 巻 p. 67-79
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    先行研究において, 医療的ケア児への保育実践には, 様々な職員や子どもとの相互作用や仲間関係の形成など, 他の地域資源では代替えできない機能があることが明らかにされたが, その効果が十分に発揮されるためには, 市区町村による基盤整備が不可欠である. 本稿では, 3つの地方自治体を対象に, 職員体制や研修および連携体制について検討した. 比較分析の結果, 公立機関型(川崎市), 拠点園型(八王子市), ネットワーク型(松戸市)として,それぞれの理念型の特長が明らかとなった. 今後の課題として, 他機関との連携や保育形態の多様化が指摘された.
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