近年エンパワーメントや権限委譲は、期待されていた成果を生みださないケースや、失敗することも少なくないとの研究報告がなされている。また、権限委譲が直接実績に影響するのではなく、モデレータ変数によって媒介されるとの先行研究もある。本研究は、中堅中小企業の組織に関する独自のアンケート調査のデータを基にして、「関係性エンパワーメント」、特に権限委譲が、どのような条件下で機能するのかについての実証研究を行った。具体的には、独立変数としての権限委譲が、いくつかのモデレータ変数、例えばコントロール活動、信条システム、サポート活動などの経営活動と共に、従属変数である挑戦意欲と財務業績などの成果に対して、どの程度の影響度合いを持つかを検討した。結果としては、権限委譲は結果変数(特に挑戦意欲)との間に部分的に相関関係があり、またモデレータ変数のレベルによって結果変数に影響を与える可能性が確認された。権限委譲とモデレータ変数との補完的な関係について、今後より多くの実証研究がなされることが望まれる。
本研究では、政府が制度設計した新連携の成功条件を次の2 点から検討する。1 つは、東北地域で実際に成功した新連携の成功条件と政府が制度設計した新連携の成功条件を比較することで、どのような条件が実際に新連携の成功に必要なのかを明らかにする。2 つ目は、政府が制度設計した新連携の成功条件には、製品ライフサイクルの視点が抜け落ちているので、製品ライフサイクルの導入期、成長期の観点を踏まえながら、新連携の成功条件を明らかにする。そうすることで、導入期にはどのような条件が新連携の成功には必要なのか、成長期にはどのような条件が新連携の成功には必要なのかを明らかにする。具体的には、東北地域における導入期と成長期における新連携に焦点をあて、その成功条件を政府が制度設計した新連携の成功条件と比較検討する。なお、その際の研究手法としては、ブール代数アプローチの手法を適用する。
筆者による新規事業開発の参与観察と複数の事例調査分析の結果、チャンピオン(擁護者)には従来言われてきたような新規事業を一貫して擁護し、支援するチャンピオンが存在する一方で、チャンピオンからアンタゴニスト(反対者)に態度を180 度変えたり、また逆にアンタゴニストからチャンピオンに態度を変えたり、場合によってはチャンピオンからアンタゴニストに変わりまたチャンピオンに戻るという人物が存在することが明らかになった。これらの発見は今後の新規事業開発の研究に重要な貢献をする論点であると考えられる。また、これらの人物の態度変化の理由は、①外部環境の悪化、②クレーム回避、③新規事業の魅力の度合いの認識の変化、であった。
従来の企業家活動研究では、企業家のネットワーク、事業コンセプトと資金獲得との関係を解明する研究が一般的であった。本稿は、広島市立大学の学生と教員が中心となって推進したアートプロジェクトのスタートアッププロセスを対象としている。最初は小規模な地域プロジェクトとして始まったが、現在は多様な分野のアクターを巻き込みながら大型プロジェクトとして成長しつつある。本研究においては小規模で社会貢献的な要素をもつプロジェクトと一般的なビジネススタートアップの差異について考察している。本研究では1 年以上にわたりアクションリサーチとインタビュー調査によってデータが収集された。事例分析の結果、プロジェクトへの資金提供の面において、社会企業家的プロジェクトと一般的なプロジェクトとの違いが認識されている。特に、従来の研究結果とは若干異なり、確固たる事業コンセプトは必ずしも必須条件ではないと結論づけている。つまり、資金確保した後に、プロジェクトのコンセプトや詳細な内容が確立されていく場合が存在する。今後の課題として、一般化をはかるために本研究の領域をさまざまな地域やフィールドに拡大していく必要性があると同時に、さらなる研究蓄積と定量研究の実施が望まれる。
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