【目的】過去9年間に経験した,冠灌流障害を伴ったスタンフォードA型急性大動脈解離 (AAAD) について検討した.【対象および方法】2007年からのAAAD手術228例中,冠灌流障害併発した12例5.3% (男7女5, 平均年齢65.7歳) を対象とした.冠動脈に解離が波及したのが11例,狭心症合併1例であった.術前PCI2例,術中冠動脈バイパス術 (CABG) 併施11例,術後PCI1例であった.心筋虚血部位は,下壁領域8例,前壁中隔領域3例,全体1例であった.【結果】手術死亡3例 (敗血症性ショック1例,脳出血1例,腸管虚血1例) で,いずれも右冠動脈病変であった.他の症例は軽快退院した.【考察および結語】AAADに伴う冠灌流障害は予後不良であるため,救命のためには積極的に冠灌流の再開に努め,早期大動脈解離手術を施行することが不可欠である.
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