【目的】アトピー性皮膚炎(AD)は憎悪と寛解を繰り返す瘙痒のある湿疹を主病変とする慢性皮膚疾患であり,発症の原因には,免疫機能や皮膚バリア機能の異常が報告されている。近年,アトピー性皮膚炎の炎症,及び症状の進行と腸内細菌叢には深い関係が在ると考えられる。その背景には,AD患者では腸内細菌叢が偏った状態であるという報告や,プロバイオティクスの投与がADの予防や治療に有効であるという報告がある。本研究では,アレルギー疾患患者数が少ない滋賀県の特産品であるフナ寿司由来の乳酸菌,Lactiplantibacillus plantarum FKW200108(LB)をADモデルマウスに経口投与し,症状の改善効果を検討した。
【方法】ヒトADモデルマウスであるNC/Ngaマウス(約30g/雄)を使用し,通常飼育を行ったものをControl群,背中に塩化ピクリルを用いてAD発症させたものをAD群,LB懸濁液を経口投与しAD発症させたものをLB群とした。飼育35日後に背中の皮膚と小腸を採取し検討した。
【結果】マウスの背中の皮膚において,AD群と比較してLB群で損傷の改善が見られた。加えて,COX-2タンパク発現量は,背中の皮膚においてAD群に比較してLB群で有意に減少した(p<0.05)。また,IFN-γ mRNA発現量は,背中の皮膚でAD群に比較してLB群で有意に減少(p<0.05),小腸ではAD群に比較してLB群で増加傾向であった(p=0.09)。加えてIL-4mRNA発現量は,背中の皮膚および小腸でAD群に比較してLB群で有意に減少した(p<0.05)。さらに,FOXP3mRNA発現量は,背中の皮膚および小腸でAD群に比較してLB群で減少傾向であった(p=0.15,p=0.17)。
【考察】LB懸濁液を投与することで腸内細菌叢の組成を改善し,免疫バランスを調整することで,AD症状が改善することが示唆された。
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