日本全身咬合学会雑誌
Online ISSN : 2435-2853
Print ISSN : 1344-2007
25 巻, 2 号
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原著
  • 後藤 崇晴, 市川 哲雄
    2019 年 25 巻 2 号 p. 39-43
    発行日: 2019/10/20
    公開日: 2020/03/05
    ジャーナル フリー

    身体的フレイルとオーラルフレイルに関する客観的・主観的評価の関係を把握し,口腔機能とその意識としての主観的評価の意義について明かにすることを試みた.被検者は,1 歯科医院にメインテナンスで来院した患者225 名を対象とした.身体的フレイルの客観的評価として握力と歩行速度を,オーラルフレイルの客観的評価として咬合力を測定した.主観的評価は,嚙む力,歩く速さ,疲れにくさ,意欲について,「20 歳代の時を100 としたらどの程度ですか」という問いかけに対して,その値を記述させた.嚙む力および意欲に関する主観的評価は,比較的高く,次に歩く速さであり,疲れにくさは最も低かった.歩行速度と咬合力に関しては,客観的・主観的評価間に有意な相関関係が認められた.一方,意欲や疲れにくさに関して,歩行速度との間には有意な相関関係が認められたものの,咬合力との間には認められなかった.嚙む力に対する客観的・主観的評価の関連について,他の身体的能力における関連とは異なり,高齢者のフレイルを考えるうえで,嚙む力の客観的評価と主観的評価の両方が必要であることが示唆された.

  • 伊藤 佳彦, 古川 奈緒, 伊藤 和花菜, 田中 恭恵, 服部 佳功‌
    2019 年 25 巻 2 号 p. 44-48
    発行日: 2019/10/20
    公開日: 2020/03/05
    ジャーナル フリー

    嚥下障害患者に液状食品を安全に摂取させる目的で,とろみ調整食品が頻用されているが,その利用が食品テクスチャーの知覚に及ぼす影響は十分解明されていない.本研究の目的は,液状食品中の固形微粒子が呈するざらつきの知覚にとろみ調整食品の添加が及ぼす影響を検討することにある.12 名の健常成人(平均年齢32.3±7.5 歳)において,微結晶セルロース(平均粒径50 µm)水懸濁液,およびそれに市販のキサンタンガム系とろみ調整食品を重量比で1 %および3 %添加したもの(3 ml)を試料に用い,階段法による認知試験により,ざらつき認知閾値を測定した.その結果,ざらつき認知閾値はとろみ調整食品の濃度とともに有意に上昇し(Wilcoxon 符号順位検定,Bonferroni 補正,p<0.0167),また認知閾値の上昇幅は,とろみ調整食品非添加時の認知閾値が低値の被験者においてより大きい傾向を認めた.著者らは先行研究において,舌糸状乳頭の発達がより良好な者においてざらつき認知閾値がより低値であることを明らかにし,舌乳頭の振動がざらつき感覚に関与する可能性を推察した.本研究の結果は,とろみ調整食品の添加が,舌乳頭同士を凝集させることで,乳頭の振動を抑制するよう作用し,ざらつき認知能力を低下させたものと推察された.

  • 志賀 博, 中島 邦久, 石川 礼乃, 小見野 真梨恵, 上杉 華子, 佐野 眞子
    2019 年 25 巻 2 号 p. 49-54
    発行日: 2019/10/20
    公開日: 2020/03/05
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,新たに開発したプロトタイプの咬合力測定装置の有用性を明らかにすることである.較正用圧力装置を用いて,プロトタイプの装置に100Nから700Nまで100Nごとに7種類の荷重をそれぞれ20回加え,抵抗値を記録した.20回の記録データ(抵抗値の逆数)について,経時的変化を重複測定-分散分析法で調べた.最初の10回の記録データから較正直線(y=ax+b)を算出後,この直線式(x=(y−b)/a)のyに残りの10回の各記録データを代入して圧力値を算出後,10回の平均値と標準偏差から変動係数,さらに相対誤差((測定値−理論値)/理論値)を算出した.次いで,健常者20名に3秒間の最大クレンチングを行わせたときの最大咬合力を咬合力分析システム(デンタルプレスケールⅡ,ジーシー)とプロトタイプの装置を用いて測定後,両者間で相関の有無を調べた.100Nから700Nまでの各荷重における抵抗値の逆数は,ほぼ近似し,経時的に増減することはなかった(F=1.481, p=0.106).最初の10回の記録データから求めた較正直線は,y=0.5211x+59.329であった.残りの10回の記録データから求めた圧力値は,加えた荷重値に近似し,変動係数が3%未満,相対誤差が2%未満と小さい値を示した.プロトタイプの装置で測定した最大咬合力とデンタルプレスケールⅡで測定した最大咬合力との間には,統計的に有意な正の相関が認められた(r=0.577, p=0.004).これらのことから,新たに開発したプロトタイプの咬合力測定装置は,有用であり,臨床応用できることが示唆された.

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