本研究の目的は,新たに開発したプロトタイプの咬合力測定装置の有用性を明らかにすることである.較正用圧力装置を用いて,プロトタイプの装置に100Nから700Nまで100Nごとに7種類の荷重をそれぞれ20回加え,抵抗値を記録した.20回の記録データ(抵抗値の逆数)について,経時的変化を重複測定-分散分析法で調べた.最初の10回の記録データから較正直線(y=ax+b)を算出後,この直線式(x=(y−b)/a)のyに残りの10回の各記録データを代入して圧力値を算出後,10回の平均値と標準偏差から変動係数,さらに相対誤差((測定値−理論値)/理論値)を算出した.次いで,健常者20名に3秒間の最大クレンチングを行わせたときの最大咬合力を咬合力分析システム(デンタルプレスケールⅡ,ジーシー)とプロトタイプの装置を用いて測定後,両者間で相関の有無を調べた.100Nから700Nまでの各荷重における抵抗値の逆数は,ほぼ近似し,経時的に増減することはなかった(F=1.481, p=0.106).最初の10回の記録データから求めた較正直線は,y=0.5211x+59.329であった.残りの10回の記録データから求めた圧力値は,加えた荷重値に近似し,変動係数が3%未満,相対誤差が2%未満と小さい値を示した.プロトタイプの装置で測定した最大咬合力とデンタルプレスケールⅡで測定した最大咬合力との間には,統計的に有意な正の相関が認められた(r=0.577, p=0.004).これらのことから,新たに開発したプロトタイプの咬合力測定装置は,有用であり,臨床応用できることが示唆された.
抄録全体を表示