日本全身咬合学会雑誌
Online ISSN : 2435-2853
Print ISSN : 1344-2007
26 巻, 2 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
  • 三上 紗季, 山口 泰彦, 斎藤 未來, 後藤田 章人, 櫻井 泰輔, 前田 正名
    2020 年26 巻2 号 p. 1-9
    発行日: 2020/11/30
    公開日: 2020/12/30
    ジャーナル フリー

    閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)用口腔内装置(OA)の治療効果とその関連因子を明らかにするために,OA 治療を行ったOSAS 患者の治療経過を検討した. 対象は,北海道大学病院を受診しOA 治療を受けた患者62 名である.OA 治療前後の無呼吸低呼吸指数(AHI)の変化を重症度別に比較し,OA の治療効果を評価した.また,治療前後のAHI の変化により,減少群と変化なし・増加群の2 群に分類し,OA の下顎位(前方移動量,最前方位に対する前方移動量の比率,垂直的挙上量),OA の種類(一体型,分離型),治療前AHI,性別,年齢の各因子を説明変数としてロジスティック回帰分析を行った. OA 治療前後のAHI の変化は,治療前の平均23.2 に対し,治療後は7.4 であり,有意に減少していた.重症群でも大幅なAHI の減少を認め,すべての重症度群でAHI は有意に減少していた.減少群と変化なし・増加群の2 群におけるロジスティック回帰分析では,最終的な説明変数として,年齢, 前方移動量,治療前AHI が選択され,偏回帰係数はいずれも有意であった. すべての重症度群のOSAS 患者に対するOA 治療の有効性が示され,重症例でもOA が治療の選択肢となり得ることが示唆された.OA の治療効果の関連因子として,年齢,OA の前方移動量,治療前AHI が挙げられ,今後,OA の適応症やOA の下顎位を検討するうえで,これらの条件への考慮が必要と考えられた.

  • 長坂 俊幸, 長坂 斉
    2020 年26 巻2 号 p. 10-15
    発行日: 2020/11/30
    公開日: 2020/12/30
    ジャーナル フリー

    かみあわせの不調が全身症状を引き起こすことがある.耳症状を含む全身症状と口腔内症状を有し,全身症状については,さまざまな専門診療科による治療を受けるも改善がみられずにいた患者が,自身の全身症状の原因をかみあわせではないかと考え,当院を受診した.オージオメータで測定した聴力値をセンサーとし,聴力値がイコライジング・スタビライジングするように歯科治療を行った.また,歯科治療と並行し,偏ったかみ方を改善する目的で,かみ癖が減少するように,全顎でバランス良くかむことのできるようなかみ方の指導(咀嚼訓練)を行った.その結果,かみあわせが正常な位置で安定し,口腔内症状のみならず全身症状も改善した.聴力値は,治療前では正常範囲外にあったが,咀嚼訓練後では改善がみられ,歯科治療後ではほぼ正常範囲内に回復し,治療効果を客観的に評価することができた.

  • 急傾斜の犬歯誘導付与
    三上 紗季, 山口 泰彦, 斎藤 未來
    2020 年26 巻2 号 p. 16-23
    発行日: 2020/11/30
    公開日: 2020/12/30
    ジャーナル フリー

    側方運動を抑制する急傾斜の犬歯誘導を付与したオクルーザルアプライアンス(側方抑制スプリント)で治療した重度の睡眠時ブラキシズム(SB)症例について報告した.患者は,20 歳代女性で,歯ぎしり音を主訴に本院を受診した.SB の臨床診断のもと,当初一般的なスタビリゼーションアプライアンスを用いて治療を行ったが,睡眠時筋電図検査によるSB 評価では全くSB 波形数の低減が認められなかった.それに対し,側方抑制スプリントを適用したところ,大幅なSB 波形数の低減を示した.側方抑制スプリントの長期間の使用によっても,歯や歯周組織,顎関節,筋などに異常は認められず,良好な経過が得られた.本症例の治療経験から,オクルーザルアプライアンスの形態によってはSB が大幅に低減する場合があり得ることが示された.ただし,側方抑制スプリントがすべてのSB 症例に奏効する保証は今のところなく,睡眠時筋電図検査を用いた客観的な効果判定を行い,使用継続の適否の判断を的確に行うとともに,歯や歯周組織などに関する慎重な定期観察が必要と考えられた.

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