閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)用口腔内装置(OA)の治療効果とその関連因子を明らかにするために,OA 治療を行ったOSAS 患者の治療経過を検討した. 対象は,北海道大学病院を受診しOA 治療を受けた患者62 名である.OA 治療前後の無呼吸低呼吸指数(AHI)の変化を重症度別に比較し,OA の治療効果を評価した.また,治療前後のAHI の変化により,減少群と変化なし・増加群の2 群に分類し,OA の下顎位(前方移動量,最前方位に対する前方移動量の比率,垂直的挙上量),OA の種類(一体型,分離型),治療前AHI,性別,年齢の各因子を説明変数としてロジスティック回帰分析を行った. OA 治療前後のAHI の変化は,治療前の平均23.2 に対し,治療後は7.4 であり,有意に減少していた.重症群でも大幅なAHI の減少を認め,すべての重症度群でAHI は有意に減少していた.減少群と変化なし・増加群の2 群におけるロジスティック回帰分析では,最終的な説明変数として,年齢, 前方移動量,治療前AHI が選択され,偏回帰係数はいずれも有意であった. すべての重症度群のOSAS 患者に対するOA 治療の有効性が示され,重症例でもOA が治療の選択肢となり得ることが示唆された.OA の治療効果の関連因子として,年齢,OA の前方移動量,治療前AHI が挙げられ,今後,OA の適応症やOA の下顎位を検討するうえで,これらの条件への考慮が必要と考えられた.
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