日本全身咬合学会雑誌
Online ISSN : 2435-2853
Print ISSN : 1344-2007
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原著
  • -顎関節症患者および閉塞性睡眠時無呼吸症候群患者との比較-
    木村 一誠, 山口 泰彦, 三上 紗季, 斎藤 未來, 後藤田 章人, 櫻井 泰輔, 前田 正名, 水野 麻梨子, 山田 恭子, 石丸 智也
    原稿種別: 原著
    2025 年31 巻1-2 号 p. 1-9
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/29
    ジャーナル フリー
    目的:睡眠時ブラキシズム(SB),顎関節症(TMD),閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の各種臨床所見を蓄積し,それらを比較することで,SBに特徴的な臨床所見をより明確にすることを目的とした.
    方法: SB,TMD,OSAS各診断群の,SBの指摘,歯ぎしり音の自覚,くいしばり,顎のだるさ・痛み,歯の痛み,頭痛,眠気,熟睡感,ストレス自覚,生活環境変化,咬耗,圧痛,粘膜歯圧痕を調査し,診断群間で比較した.また,SB診断の有無,TMD診断の有無,OSAS診断の有無,歯科医によるSBの指摘の有無を各々目的変数として二項ロジスティック回帰分析を行った.
    結果:SB診断には,家族からの指摘,歯ぎしり音の自覚,起床時の顎のだるさ,咬耗,女性が有意な正の関連を示した.歯科医による歯ぎしりの指摘の有無には,SBの臨床診断基準で用いられている項目は有意な関連を示さなかった.TMD診断には,顎関節・咀嚼筋の圧痛,女性が有意な正の関連を示した.OSAS診断には,昼間の眠気,年齢,男性が有意な正の関連を示した.3つの診断群に対し共通で関連を示したのは,SBとTMDへの性別(女性)のみであったが,両者の女性比率の間には有意差を認めた.
    結論:本研究では,SBに特徴的な臨床所見でTMDやOSASと共通性が高いものは認められなかった.臨床所見に基づくSB診断は,TMDやOSASから独立して行うのが妥当と考えられた.
  • 後藤 崇晴, 市川 哲雄, 藤原 真治, 小谷 和彦, 坂根 直樹
    原稿種別: 原著
    2025 年31 巻1-2 号 p. 10-14
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/29
    ジャーナル フリー
    高齢者の健康を決定するうえで栄養摂取は重要な役割を果たしており,栄養不足は虚弱やサルコペニアのリスクを高める.栄養を考えるうえで,咀嚼能力だけでなく,食品の選択,満足感,食事の楽しみといったより幅広い側面を含む⌈食べる力⌋という概念が注目されている.本研究では,高齢者の⌈食べる力⌋と咬合や嚥下機能との関係を,中山間地域の研究データを用いて検討した.Mima-SONGS研究から高齢者63名を対象とし,咬合力,咬合接触面積,前後的,水平的咬合バランス,反復唾液嚥下テスト(RSST),⌈食べる力⌋を評価する10質問から検討した.その結果,全体として⌈ゆっくり嚙んで食べる⌋や⌈一口量を減らして食べる⌋といった具体的な咀嚼行動に関しては比較的評価が低かった一方で,⌈水分を適宜取って食べる⌋や⌈いろんな食品に親しむ⌋など,食行動全般に関する配慮のほうが高く評価されていることが確認された.咬合力が低い高齢者ほど,食べやすく調理し,ゆっくり嚙む工夫をしていることが示された.また,前後的咬合バランスは,その重心が前方にある被検者ほど⌈食べやすく調理している⌋ことが観察された.つまり,高齢者は自身の口腔機能状態に応じて,食事行動を調整していることが示された.
その他
  • 上杉 華子, 中島 邦久, 志賀 博, 小見野 真梨恵, 横山 正起, 隅田 由香
    原稿種別: その他
    2025 年31 巻1-2 号 p. 15-19
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/29
    ジャーナル フリー
    患者は72歳女性.咀嚼時の疼痛を主訴として来院した.3か月前に上下顎全部床義歯を新製したが,装着当初からうまく噛めず,繰り返し調整しても改善しなかったという.上下顎義歯はそれぞれの顎堤に適合していたが,下顎臼歯部床下粘膜に発赤と咬合時疼痛が認められた.下顎位の不良を疑い,義歯を装着した状態で静かに閉口してもらうと,下顎が後方に誘導されたため,咬合採得時の下顎の前方偏位による下顎位のずれが原因と考えられた.現義歯を用いて静かに閉口した状態で咬合採得を行い,上下顎義歯を一塊にして取り出したのち,上下顎義歯をラボスキャナーにて読み込み,下顎義歯を3Dプリンターにて造形することで,下顎位のずれを修正した新義歯を製作することができた.下顎位を修正した新たな義歯を装着し,義歯内面の適合の調整や咬合調整を行ったところ,粘膜の発赤や疼痛は消失し,咀嚼能力検査値も向上した.デジタル技術の応用により新たな咬合採得のみで新義歯を製作することが可能となり,患者の心理的・身体的負担の減少に寄与できたと考えられる.
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