目的:睡眠時ブラキシズム(SB),顎関節症(TMD),閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の各種臨床所見を蓄積し,それらを比較することで,SBに特徴的な臨床所見をより明確にすることを目的とした.
方法: SB,TMD,OSAS各診断群の,SBの指摘,歯ぎしり音の自覚,くいしばり,顎のだるさ・痛み,歯の痛み,頭痛,眠気,熟睡感,ストレス自覚,生活環境変化,咬耗,圧痛,粘膜歯圧痕を調査し,診断群間で比較した.また,SB診断の有無,TMD診断の有無,OSAS診断の有無,歯科医によるSBの指摘の有無を各々目的変数として二項ロジスティック回帰分析を行った.
結果:SB診断には,家族からの指摘,歯ぎしり音の自覚,起床時の顎のだるさ,咬耗,女性が有意な正の関連を示した.歯科医による歯ぎしりの指摘の有無には,SBの臨床診断基準で用いられている項目は有意な関連を示さなかった.TMD診断には,顎関節・咀嚼筋の圧痛,女性が有意な正の関連を示した.OSAS診断には,昼間の眠気,年齢,男性が有意な正の関連を示した.3つの診断群に対し共通で関連を示したのは,SBとTMDへの性別(女性)のみであったが,両者の女性比率の間には有意差を認めた.
結論:本研究では,SBに特徴的な臨床所見でTMDやOSASと共通性が高いものは認められなかった.臨床所見に基づくSB診断は,TMDやOSASから独立して行うのが妥当と考えられた.
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