高インスリン血症に代表されるインスリン抵抗性は体液貯留や交感神経の反応亢進を惹起し、高血圧の発症, 進展に関与する重要な因子として注目されている。高インスリン血症が高血圧への進展の予測因子となり得るかは, 縦断的疫学調査の結果によらなければならない。本研究では, 糖尿病検診を受診した正常血圧者120名を11年後に再検診し, インスリンを含む諸変量について, 解析を試み, 高インスリン血症が将来の高血圧発現の予測因子となり得るかを検討し、以下の成績を得た。
1) 初回検診時では, 50gOGTTにおけるインスリン120分値のみ拡張期血圧と有意の相関を認めた。しかし, その他インスリン値とインスリン/血糖比は, 収縮期および拡張期血圧との問に有意の相関を認めなかった。
2) 空腹時, 60分, 合計のインスリン値および空腹時, 面積のインスリン/血糖比は11年後の収縮期血圧と, また, 空腹時, 60,120分, 合計のインスリン値および空腹時, 合計, 面積のインスリン/血糖比は11年後の拡張期血圧と有意の相関を認めた。
3) 年齢, 性別, 初回検診時での収縮期血圧を考慮した場合, 将来の高血圧進展と空腹時および負荷後180分のインスリン値, 空腹時のインスリン/血糖比, 負荷後30分のΔインスリン/Δ血糖比, 尿酸値の間に有意の関連性を認めた。
以上より, 高インスリン血症およびインスリン/血糖比は, 将来の高血圧進展に関与することが示唆された。
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