人体科学
Online ISSN : 2424-2314
Print ISSN : 0918-2489
27 巻, 1 号
人体科学
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目次
原著
  • 諸 昭喜
    原稿種別: 本文
    2018 年27 巻1 号 p. 1-
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル フリー
    韓方医学と西洋医学という二元的な医療体系を維持している韓国社会において、産後風は韓方医学では明らかな病気とされるにもかかわらず、西洋医学ではその存在が認められないという特異な位置を占めている。本研究では、産後風を例に韓方医学の病気が西洋医学との関係の中でどのように変化してきたのかについて分析し、産後風に関する言説が政府の保健政策や専門家の研究の影響を受けてきたことを明らかにする。分析方法として、韓国で1985年以降に発表された産後風に関する47篇の韓方医学の論文を抽出し、言説の変化を考察した。その結果、韓方医学が産後風の理論的基礎を提供し、産後の女性の身体管理の重要性を力説して、産後風の存在を確実なものにしてきたことが明らかとなった。同時にこのような言説を通じて、韓方医学の地位上昇を図り、産後に対する社会的関心を呼び起こし、産後風の予防としての産後ケア(産後調理)を強調することで、産後風をより強固に作りあげる役割を果たしてきた。産後風をめぐる韓方の動きは、病気が社会において産みだされ、社会の変化に応じて定義を変えていく一つの例であり、病気が社会的に構築されることを示すものと言える。
  • 大門 正幸
    原稿種別: 本文
    2018 年27 巻1 号 p. 13-
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル フリー
    近年、臨死体験やお迎え体験、臨死共有体験、悟り、故人との邂逅、神秘体験、過去生記憶の想起といった、人生観を一変させるような現象を霊的変容体験(Spiritually Transformative Experience, STE)として包括的に記録・調査・研究しようという機運が高まり、そのための組織が設立されたり、いくつかの先行研究が発表されたりしている。本稿では、日本人の子供が話した特異な胎内記憶について報告し、子供が語る胎内記憶の中には親の霊的変容を誘発する場合があることを示す。また、体験の影響を測る方法として、先行研究で臨死体験や神秘体験、退行催眠時の「死の体験」の影響の強さの計測に用いられてきたLife Changes Inventory-Revisedを利用する可能性についても考察する。
評論
  • 理念「オリンピズム」の探究という視点において
    伴 義孝
    原稿種別: 本文
    2018 年27 巻1 号 p. 23-
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル フリー
    オリンピズムは近代オリンピックの復活を提唱したクーベルタンの造語である。造語は1962年の大島邦訳書『ピエール ド クベルタン オリンピックの回想』によれば「オリンピック主義」と直訳されている。他方で2015年版の『オリンピック憲章』は今日的なオ リンピズムの解釈として二つの基本的な指標を提示している。ひとつは「肉体と意志と精神」のすべてにおいてバランスのよい結合を目ざす「生き方の哲学」であって、他は「スポーツを文化と教育へ融合させる」ために「生き方の創造」を探求するものである。ところで1936年のクーベルタンは「私のオリンピズムは、まだ、任務の半分を象徴しているのにすぎない」と書き遺している。本稿では、クーベルタンのその最後の希望に焦点を当てて、 またジャーナリストとしての大島鎌吉が関与してきた日本におけるオリンピック運動を点検することにおいて、オリンピック運動の理念「オリンピズム」における核心的な課題について検討してみる。
研究ノート
  • 須田 斎
    原稿種別: 本文
    2018 年27 巻1 号 p. 36-
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル フリー
    昨年、筆者は「心的いのち」と「生物学的 (身体的) いのち」との接点において、 「老い」と「個性化の過程 (自己実現)」との関係から「生命 (いのち)」の理解を深めた。今回は、進化という別の視点から「いのち」を考えてみたい。「いのち」は進化と不可分な関係にあると思われるからである。その際、東西の進化理論の比較から論じる。本研究では、対応原理を仮説として認め、この原理を介して「いのち」の一面を考えた。ここで対応原理とは、心の世界と物質の世界の間に存在する (対称性に基づく) 不思議な対応関係のことを指している。ところで、この仕事で扱うのは、生命 (いのち) である。しかし、実際には生命そのものは捉え難いので、まず、「生命 (いのち)」を単純に「生物」に置きかえて、生物の進化理論、特にその東西の考え方の違いに着目して考察することから始めた。その差異の背景には、生物学的いのちばかりでなく、心的いのちが深く関わっているものと推察される。そこで、一見まったく異なるこの両理論が、河合隼雄の著述からヒントを得つつ、自然観の捉え方 (因果律・共時性) や対応原理を介して統合できる可能性について論じた。本研究は、生物の進化理論を介して「いのち」の理解を深める試みである。
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