植物の根の細胞壁は耐塩性に関連している。コムギ(Triticum aestivum L.)の塩感受性品種(Yonliang-15,GS-6058)と耐塩性品種(JS-7,Xinchun-31)を使用して,根端の細胞壁構成成分と耐塩性メカニズムとの関係を評価した。根の伸長部におけるペクチン含量は,塩ストレスによってJS-7を除くすべての品種で減少した。塩ストレスによって,伸長部と隣接部におけるヘミセルロースI とヘミセルロースⅡは,耐塩性品種と比べて塩感受性品種で有意に増加した。両組織のセルロース含量はすべての品種で増加し,耐塩性品種よりも塩感受性品種で有意に増加した。ヘミセミロース中のウロン酸含量は逆の傾向を示したが,伸長部のペクチン中のウロン酸含量は耐塩性品種よりも塩感受性品種で有意に低かった。根細胞壁の陽イオン交換容量は耐性品種よりも感受性品種で有意に低かった。根の成長量,伸長部の全細胞壁におけるペクチンの相対含量および根の細胞壁の陽イオン交換容量との間には正の相関があった。しかし,根の成長量,全細胞壁におけるセルロースの相対含量には負の相関があった。これらの結果から,コムギの根細胞壁における高いペクチン含量と陽イオン交換容量,ならびに低いヘミセルロースとセルロースの含量が塩ストレス条件下での根の成長と耐塩性の維持に関与する可能性が示唆された。
抄録全体を表示