日本砂丘学会誌
Online ISSN : 2434-9291
Print ISSN : 0918-5623
68 巻, 2 号
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  • Asres Elias, 安延 久美, 能美 誠
    2021 年 68 巻 2 号 p. 35-47
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/03/20
    ジャーナル 認証あり
    本研究では,農業技術の普及と採用におけるモデル農家(MF)による農家間普及(F2FE)アプローチの役割を検証した。データはエチオピアのアムハラ地域の特定の村の150人から得た。その結果,農業情報の普及は主にMF によって行われており,次いで改良普及員,近隣住民の順となった。また,情報発信源としてのICT や地元の研究センターの利用率は非常に低いことがわかった。MF とFF (フォロワー農家)の収量と農法を比較した結果,MF の方が 20~30%高いと予想されていたが,Teff( テフ : Eragrostis tef)と小麦の収量における改良種子の使用を除き,すべてのパラメータで有意差は見られなかった。この結果を受けて,ロジスティックモデルを用いてMF の選定に関連する要因を明らかにした。恵まれた資源,ケベレ行政への関与(通常は政治的な任務),農場での実証実験の経験,推奨された割合ではなく技術パッケージの使用が,MF に選ばれる確率を高め,一方で,農業省が設定し,普及指導サービス(EAS)のガイドラインに含まれている市場志向の作物を栽培することや,その地域の生産基準を実現することなどの基本的な基準は,MF に選ばれるための重要な要素ではなかった。全体的に,革新性を損なうF2FE の基準と原則がMF の選考時に不適切に実施され,政治との境界が不明確であったため,EAS の成果は目標から遠く離れてしまった。したがって,農民の学習とイノベーションを豊かにするためには,F2FE の原則を遵守し,メリットに基づいてMF を選出し,情報を広めるだけでなく,政治とは無縁の双方向のコミュニケーションを行うEAS システムが重要であると言える。
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