ローズマリー(Rosmarinus officinalis L.)はシソ科の芳香性ハーブであり,その医学的および美容 的有益性のために,乾燥および半乾燥地域で広く栽培されている。 8種のローズマリー品種を中塩 濃度および高塩濃度の条件下(50および100 mM NaCl)で栽培し,この種の耐塩性機構を解明する ために,養分状態および水分状態を測定した。結果は以下の通りである。1)非塩処理条件に対する 相対成長(相対耐性指数:RTI)は,50 mM NaCl処理において,Primley Blue >> Lockwood de Forest ≒ Prostratus ≒ Salem ≒ Benenden Blue > Arp ≒ Tuscan Blue > Officinalis の順であった。 2)50 mM NaCl処理において,葉中のNa/K比とネクロシス発生率は8品種すべてに渡ってRTI と有意に負の 相関を示した。 3)葉中 Na濃度が高く,ネクロシス発生率が低いことは葉の組織耐性が高いこと を意味するが,それは,品種間でわずかに異なっており,Salem,ArpおよびTuscan Blueは50 mM NaCl処理において比較的高い葉組織耐性を有している可能性が示唆された。 4)葉の含水率は両塩 分濃度において影響を受けにくかった。 5)RTI とNa/K比または葉のネクロシス発生率との間の相 関関係は,100 mM NaCl下では不明瞭になった。ローズマリーの耐塩性メカニズムは,水分状態よ りも低いNa/K比による適切な養分状態を維持することであると思われた。葉に取り込まれた一部 のNaは浸透圧を形成し得るが,葉に過剰に侵入したNaは生育減退を引き起こすイオンストレス を発生させた。
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