東京電力福島第一原子力発電所事故後,汚染状況に応じて農耕地土壌の表土剥離及び客土による除染が行われた。川俣町山木屋地区農家圃場にて除染前後の土壌を比較したところ,全炭素含有量および窒素量,可給態窒素,CECに大きな差が生じていた。とくに畑圃場では除染後客土で全炭素量が非常に少なく,水田圃場の除染後客土では可給態窒素が検出できなかった。除染は農耕地土壌の肥沃度を大幅に低下させており,土壌劣化からの復興は急務である。除染後のロータリーによる耕うんにより,全炭素および可給態窒素は一定程度回復し,上層(客土)と下層の土壌の混和は肥沃度回復に有効である。上層(客土)と下層土壌(黒ボク土)の混合割合を検討したモデル試験において,客土の影響を体積比でそれぞれ0, 50, 80, 100%に変化させた場合,客土の混合割合が高い土壌では下層土に比べて土壌の窒素無機化率は低く,植物体の成長が悪く,ヘアリーベッチや窒素肥料を施用した場合でも同様であった。客土の基本的理化学性や物理性の乏しさ,リン酸供給能力,pH緩衝能の不足,アンモニア態窒素の過剰蓄積と植物への害などが直接の支配要因となり,植物生育が制限されることが示唆された。体積比で20%以上下層土を混合することで植物生育に改善が見込めると考えられた。除染後土壌では次表層土をなるべく多く混合すること,その上で肥料施用が重要な役割を果たすと考えられた。
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