JSBi Bioinformatics Review
Online ISSN : 2435-7022
2 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
Primers
  • 奥田 修二郎
    2021 年2 巻1 号 p. 1-6
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/05
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    長年の間、環境微生物の研究は培養できた微生物について実験を実施することで知見を積み上げてきた。しかし、次世代DNAシーケンサーの登場でその解析の方法論が大きく変化した。環境中のすべての微生物のDNAを網羅的に解析することができるメタゲノム解析に加えて、16S rRNA遺伝子のみを対象としたメタ16S解析も次世代DNAシーケンサーで実施することでその解析の深度が増している。このような環境微生物の研究に大規模なDNA配列のシーケンス技術が応用されてからすでに10年以上が経過している。現在では、あらゆる環境においてメタゲノム・メタ16S解析が実施され、環境中の微生物の系統に加えて、遺伝子配列そのものやその機能に至るまで詳細に解析されるようになってきた。本稿ではこれらの環境微生物解析におけるバイオインフォマティクスの役割について述べたい。

  • 小田 真由美
    2021 年2 巻1 号 p. 7-14
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/05
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    エピジェネティクスは「細胞間遺伝するゲノム外の情報」を対象とした研究分野を指す。修飾パターンの複製分子メカニズムを持つDNAメチル化を真のエピジェネティックマークと呼ぶこともある、研究の進展とひろがりにより現在の研究範囲は基本的なDNAメチル化・ヒストン修飾にとどまらない。多細胞生物の体はゲノム情報を利用して多くの機能的な組織・器官をつくっている。単一の細胞はどの時点で異なる細胞種を生じるのか、細胞のアイデンティティとなる機能はいかに確立され維持され、どのように破綻するのか?当然ながらゲノム機能発現には転写因子などのトランス因子が大きな役割を持つが、予測された結合配列の配置のみでは結合箇所の予測が不十分であることはよく知られている。配列以外のゲノムへのアクセス状況の違いを司るエピジェネティック分子機構の可変と不変の仕組を理解するために、これまでの知識と情報のリソースに併せ、さらなる解像度を持つ解析手法を用いることによって情報の連係を見出すことが今後の課題とみている。私たちのからだが30億塩基以上の高ノイズなゲノム配列情報をうまく使って多くの細胞を生み出し、生命の営みを続けているその中で、大きな間違いをせずに発生・発達を繰り返すダイナミックな仕組みに思いを馳せていただければと思う。

総説
  • ―第2回 行列同時分解―
    露崎 弘毅
    2021 年2 巻1 号 p. 15-29
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/05
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    生命科学分野で取得されるデータ集合は、雑多(ヘテロ)な構造になり、ヘテロなデータ構造を扱える理論的な枠組みがもとめられている。本連載では、汎用的なヘテロバイオデータの解析手法である行列・テンソル分解を紹介していく。第1回では、1つの行列における代表的な行列分解PCA/SVD、NMF、ICAを紹介し、それらを「パターンの和としての行列分解」、「射影としての行列分解」という2つのアプローチで説明した。第2回でも引き続きこれらのアプローチを利用し、行列が複数ある時に適用できる、行列同時分解について説明する。

  • 松井 求
    2021 年2 巻1 号 p. 30-57
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/05
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    分子系統学は生物学の基盤であり、我々は情報から生物学的知見を取り出す過程で、その恩恵を陰に陽に受けてきた。同時に、分子系統学は革新的な手法やソフトウェアの開発が新たな分野の開拓に直結する、アルゴリズム・ソフトウェア開発者の桧舞台でもある。例えば、1987年に登場した近隣結合法は大規模なTree of Lifeの構築を可能にした。また、MAFFTやIQ-TREEといった高速かつ高精度なソフトウェアは、BLASTが情報生物学の基盤技術であるのと同様に、進化学を下支えする必要不可欠なインフラとなっている。本総説では、まず分子系統学を構成する「標準手法」の理論と実装を解説する。さらに近年勃発した「標準手法」をめぐる論争をまとめ、最後に、現時点でできる最善の分子系統解析アプローチについて議論しながら、将来の生物情報学者、進化学者、アルゴリズム・ソフトウェア開発者をこの魅力的な分野へといざないたい。

  • 中杤 昌弘
    2021 年2 巻1 号 p. 58-75
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/05
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    近年の測定技術の発展は、ゲノム情報だけでなく様々なエピゲノム情報の取得を可能にした。中でもDNAメチル化は、他のエピゲノム情報の担い手と比べて安定的に遺伝子発現制御を行う仕組みである。ヒトのDNAメチル化は、疾患の有無や、これまでの生活習慣によって変動する。このことから、DNAメチル化は種々の疾患の病態解明のカギになると考えられ、さらに診断・発症リスク評価等のバイオマーカーとしての活用も期待されている。DNAメチル化アレイによって、ヒトゲノムのDNAメチル化プロファイルを比較的安価に取得できるようになり、大規模なエピゲノムデータの解析が可能になった。本稿では、エピゲノムワイド関連研究(Epigenome-wide association study, EWAS)に焦点を当て、DNAメチル化のデータ形式や、頻用される解析方法及び解析上の注意事項について概説する。また、近年提案されたアプローチや残されている課題についても概説する。

  • 柳澤 渓甫
    2021 年2 巻1 号 p. 76-86
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/05
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    近年の薬剤開発コストの増大に対し、計算機を用いて化合物群から薬剤候補化合物を選抜しようとするバーチャルスクリーニングは、化合物選抜のための化合物の合成やin vitro実験を必要としないことからコストの大幅削減につながることが期待されている。特に、タンパク質立体構造情報を用いたバーチャルスクリーニングでは、タンパク質と化合物との物理化学的な相互作用を評価し、化合物を選抜する。このため、既知の活性化合物の情報を必要とせず、新規構造を持つ薬剤候補化合物の選抜が可能である。本稿では、薬剤開発におけるタンパク質立体構造を用いたバーチャルスクリーニング手法について一連の流れを示し、近年の動向および研究事例について紹介する。

  • 細田 正恵, 木下 聖子
    2021 年2 巻1 号 p. 87-95
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/05
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    遺伝子やタンパク質から遅れて糖鎖の生物学的な役割が重要視され、様々な実験データが蓄積されてきた。糖鎖とそれに関わる細胞や分子が生体内の多岐に広がっており、糖鎖を網羅的に解析するグライコミクスは、ゲノミクス、トランスクリプトミクス、プロテオミクス、メタボロミクスなどオミクス研究に並び、生命の解明に必要とされる。グライコミクスにおける糖鎖インフォマティクス研究では、糖鎖を扱う情報や解析するツール、データベースなどのリソースがここ20年で発展してきている。最近利用されている糖鎖構造の表記法やこれらの糖鎖情報を解析するために開発されてきたリソースについて紹介する。また、国際的に連携が行われているポータルサイトにより様々な糖鎖関連データベースが統合されている。これらの主なものについて紹介する。

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