苗の「品質」や「健苗」という用語は存在するものの,定義は曖昧である.ここでは,それを補うために各種の要因と苗の生理生態との関係を整理した.育苗法は温床育苗から鉢育苗へと替わり,最近では,セル成形苗が急速に普及して現在に至っている.セル成型苗は,従来の育苗とは異なり,セル容量が小さく栽植密度が高いので,根域制限,相互遮蔽,乾燥ストレスと成育の関係や定植後の成育・収量への影響が調べられた.徒長はセル育苗の大きな問題であり,機械定植では大き過ぎる苗や徒長苗は植え傷みしやすい.このため,矮化剤,接触刺激,肥料制限,光質制御による徒長抑制が行われた.苗に付加価値を与えるために,種子発芽の促進と斉一性の向上,花芽分化の促進,接ぎ木による耐病性などの付与,ウイルス・フリー化や弱毒ウイルスの接種が研究された.苗や挿し穂の長期貯蔵は育苗センターで求められており,苗貯蔵中の低温,光源の種類,空気組成の影響や育苗時の相対湿度,ABAの散布などによる貯蔵期間延長効果が調べられた.
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