映画研究
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選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
  • 1920 年代後半日活における時代劇の脚本家・林義子
    森宗 厚子
    2023 年 18 巻 p. 4-25
    発行日: 2023/12/09
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    1924 年から 1930 年に日活で尾上松之助作品など 22 本を手がけた脚本家・林義子を再評価する。当時「日本最初の女流ライター」と称されたが、日本映画史の通説では看過され、先行研究もみられない。林のフィルムやシナリオは散逸しているため、現存する雑誌、新聞広告、映画館プログラムなどの資料を通して、作品内容を明らかにした。全て時代劇ながら当時の潮流に呼応した幅広い題材を扱い、松之助の 座付作家に限定されない活動が判った。全作とも男性主人公による映画で、戦後に女性脚本家が女性映画に携わったのとは対照的である。また、背景にある日活京都の脚本部の状況を見直し、後期松之助の変革を担った林が、読者投稿家出身ゆえに観客層との双方向性を促す媒介となり得た点を考察した。さらに、日本映画史上、無声映画の勃興期となった大正末期に、確立され始めた脚本家という存在が可視化された例として林義子を位置づけて捉えることを試みた。
  • Examining the Film Dialogue in Sweet Smell of Success
    森本 光
    2023 年 18 巻 p. 26-41
    発行日: 2023/12/09
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    This article examines the dialogue in Sweet Smell of Success (1957), with a particular focus on the use of subtext. Although director Alexander Mackendrick admits it as a box-office flop, Sweet Smell is arguably one of the most iconic films of the 1950s. In recent years, this film has come to be highly acclaimed by some critics and considered one of the true classics in Hollywood cinema. The film has many stylistic virtues, but most unique of all is its dialogue. Based on Ernest Lehman’s novella and written for the screen by playwright Clifford Odets, the film’s dialogue deserves critical attention and detailed analysis. In particular, the meaningful use of subtext is noteworthy. The word “subtext” generally means the hidden meaning beneath the surface of human speech. In scriptwriting, subtext is essential for dramatic purposes, but, furthermore, Sweet Smell develops it as a part of its main theme. So this article considers how the film utilizes subtext in the dialogue and reveals its dramatic and thematic dimensions.
  • 『ライジング・ドラゴン』におけるスター・イメージの再創造
    雑賀 広海
    2023 年 18 巻 p. 42-64
    発行日: 2023/12/09
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    黄金期が過ぎた香港映画では、監督や俳優の高齢化が産業の衰退との関連で問題視されてきた。しかし、香港人アイデンティティが1970年代ごろから定着しはじめたものであれば、老いた香港人は2000年代以降に描かれはじめた新しいイメージである。とりわけ身体を酷使するカンフー映画のアクション俳優にとって、老いはスター・イメージの維持において否定的に作用しやすい。本論文は黄金期香港映画を代表するアクション・スターのジャッキー・チェンをとりあげる。1990年代までの彼は若く健康で強靭な身体を誇示していたが、2000年代以降は老いの演技を実践しながらCGIをとりいれるようになる。これはアクション俳優としての退化ではなく、彼の演技が新たなモードにはいったことを示している。それは、1990 年代までの虚構に打ち勝つ実体的な身体イメージからデジタル映像をとりこみ生成変化する身体イメージへの移行であり、老いた彼の身体は柔軟なマスキュリニティを手にいれる。
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