日本老年薬学会雑誌
Online ISSN : 2433-4065
6 巻, 1 号
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寄稿
  • 茂木 正樹
    2023 年6 巻1 号 p. 1-7
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/04/25
    ジャーナル フリー

    著増する認知症への対策が急がれている.高齢者の認知症はアルツハイマー病や血管認知症が混在する混合性認知症が多く,血管性要因が関与することから若年期の生活習慣病との関連が唱えられている.中年期の高血圧は血管障害を誘導して将来の認知症との関連が疫学的に示されているが,高齢期での高血圧が認知症に与える影響についてはよくわかっていない.SPRINT試験は標準的な降圧治療よりも,より厳格な降圧治療群において,心血管合併症や生命予後が改善されることを証明したが,認知症との関連も解析され,75歳以上の高齢者においても厳格な降圧により軽度認知機能障害(MCI)の発症が有意に抑制されることがわかった.また脳や海馬の容量は減少するものの脳血流が増加すること,こうした脳への影響は腎機能障害と関連があることもわかってきた.一方で,血圧変動性がある高齢者ではその効果が見られなくなること,心房細動を有する高齢者では厳格降圧群でむしろ認知機能が悪化することなど,特定の高齢者では厳格な降圧がデメリットになることが示されている.以前より,認知機能低下患者において交感神経系の活性化が見られることが報告されている.厳格な降圧治療により,しっかりと降圧されかつ交感神経系の活性も適切に抑制された高齢者では認知症の進行が抑えられる可能性があるが,血圧の変動が大きいと潜在的な低血圧による脳への血流低下状態が誘導され,認知機能の低下につながると考察する.このように,高齢者の降圧治療については過度の血圧低下がないかに注意する必要があるが,老若男女を問わず,高血圧患者は少なくとも140/90 mmHg以下の標準的治療目標値は達成されなくてはならない.しかし,多くの降圧薬が存在するにもかかわらず実際の高血圧の治療管理率は低く,将来の認知症患者を減らすために,適切な降圧療法が望まれる.

  • 神村 英利
    2023 年6 巻1 号 p. 8-13
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/04/25
    ジャーナル フリー

    高齢者は複数の疾患を併発して,多剤併用処方になることが多い.多剤併用は薬物相互作用,薬物有害事象,転倒等のリスクを高めることから,適宜,高齢者に対して潜在的に不適切な薬物(PIMs)をスクリーニングして,処方を適正化する必要がある.

    PIMsのスクリーニングツールとしてはSTOPP criteria,高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015,東京大学病院持参薬評価テンプレート等がある.

    STOPP criteriaは一般病棟の患者に適用され,その後の薬学的介入により,ベンゾジアゼピン系薬,非ステロイド性抗炎症薬,臨床的に適応のない薬物が多く中止されている.

    高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015の「特に慎重な投与を要する薬物(以下,ガイドライン収載薬)のリスト」は在宅,療養病棟,地域包括ケア病棟の患者に適用されている.そして,療養病棟と地域包括ケア病棟での実践例から,減薬されるのはガイドライン収載薬だけではないことが示唆されている.

    東京大学病院の持参薬評価テンプレートは処方を多面的に評価できるツールであり,これまでに一般病棟,回復期リハビリテーション病棟,地域包括ケア病棟の患者および特別養護老人ホームの入所者に適用されている.その結果,入院中に処方が適正化されるのは同種同効薬の重複,副作用等の緊急性の高い理由がある場合で,ガイドライン収載薬や服薬管理能力の低さは減薬の理由になりにくいことが判明している.また,いずれの病棟においても病状に応じて新たな薬物が処方されており,退院後も処方の適正化を継続する必要があることも明らかになっている.さらには,高齢者施設では副作用や処方意図不明といった理由および検査値を基に処方が適正化されている.

    減薬により状態の悪化が予測される場合もあるため,スクリーニングされた全てのPIMsを中止できるわけではないが,多くの医療機関,高齢者施設,居宅で処方の適正化が行われ,多剤併用によるリスクが低減するように願っている.

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