日本教科内容学会誌
Online ISSN : 2189-2679
9 巻, 1 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 奈須 正裕
    2023 年9 巻1 号 p. 3-14
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では,コンピテンシー・ベイスの教育とは何か,どのような学力論に立ち,どのようなカリキュラムや教育方法を要請するのかについて概観した。その結果,いずれにおいても,学習の転移と各教科等の特質に応じた「見方・考え方」が鍵概念であり,汎用性を求める教育であるからこそ,各教科等がいっそう大切になってくることが明らかとなった。最後に,これからの教科内容研究に期待することとして,「見方・考え方」を拠り所とした教科内容の編成,各教科等の特質を踏まえたオーセンティックな学習や明示的指導を実践開発する必要性について述べた。
  • 櫨蝋燭を作る仕事から歴史学への思考の展開の保障
    梶原 郁郎
    2023 年9 巻1 号 p. 15-26
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は, 櫨蝋燭を作る仕事から歴史学への思考の展開の保障を意図して, 江戸期の歴史学を保存する授業内容を構想している。この課題に, 教育実践に関連づけて教科内容の研究に取り組む【課題】(教科内容学会, 2014)を前に, さらに社会科教育研究でも【課題】に着手されてきていない現状を前に, 次の観点から取り組んでいる。(1)櫨蝋燭作りの仕事(大野実践)を江戸歴史学の学習の起点とするには, 歴史学のどの内容にまず着眼して, 教授学習過程が成立するように発問を作る必要があるのか,(2)櫨蝋の生産・流通に焦点を当てて【法則】(農業の発達を土台として商業が発達すれば幕府は崩壊する)学習を構想するには, 歴史学のどの内容をどのような発問に「仕立て直す」必要があるのか。この検討を通して本稿は, 櫨蝋燭を作る仕事から歴史学への思考の展開を図る, 教科内容学の授業内容を提出している。
  • 石光 政德
    2023 年9 巻1 号 p. 27-39
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は,表現を軸とした音楽科と学芸会の教科等横断的な学習において,教科等内容がどのように相関するのかを明らかにすることである。研究の方法は,まず,音楽科と学芸会の教科等内容を関連付ける授業展開の視点を導き出して,研究実践を構想・実施する。次に,研究実践における音楽科と学芸会における抽出児の学習状況を分析する。分析結果より,音楽科と学芸会の教科等内容がどのように相関したのかを明らかにする。結論として,音楽科で学習した教科等内容に,学芸会の教科等内容を関連付けたことで,抽出児は他者意識をもって音楽科の学習内容を客観視できるようになった。そのことによって,音楽科の学びを再構成することにつながった。同時に,学芸会では,自分自身の音楽科における学びを発信するためのコミュニケーション技術の獲得を可能とした。ここでは,音楽科の学びの再構成と,学芸会の指導内容であるコミュニケーション技術の獲得に相関がみられた。
  • 数学科「代数学」の講義での実践
    花木 良
    2023 年9 巻1 号 p. 41-49
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    日本教科内容学会では,教科内容学に基づく教員養成のための教科内容構成の開発を行っている。その中で,数学の「仮説4教科内容構成の具体」では,①数学の体系性,②学校数学との繋がり,③現実世界との繋がり,④数学の実用性,⑤数学の文化的価値,⑥探究活動の6つの構成要素が挙げられている。そして,『要素⑥は,他の5要素の理解を深め,また数学的な発想力や工夫する力を育成するために取り入れるものである』としている。学校数学(小学校・中学校・高等学校で学習する算数・数学)では,課題学習やSSH,理数探究などで,探究活動が拡充されている。また,高校生は数学の未解決問題に興味をもち探究することが知られている。研究の目的は,数学科代数学の講義で,オリジナル教科書を作成し,学生の探究活動を実現することである。ここで,探究活動は,自分で手を動かして実験的に計算してみたり,法則や公式を発見したり,興味のある数や定理を調べてみたりし,講義内容に加えて新たな知見を得る行為と規定する。研究方法は,実際に教科書を作成し,学生に探究課題を課し,発表会を実施し,発表内容を分析することである。教科書には,数に関する未解決問題,分数を小数で表す題材などを入れ,学校数学や探究を意識した。発表会では,どの発表でも講義内容に加えて新たな知見が入っていたため,すべての学生が探究活動を行えていた。
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