真空蒸溜及び乾燥について、昨年度の全般的な傾向をふり返ると、国内では可塑剤の生産増加等に伴ひ、分子蒸溜も含めて高真空蒸溜の工業的応用が始めて活溌に行はれた事が注目されるが、一方真空乾燥は血清、ワクチン等に対する応用が、実験室的又は小規模に行はれた位でペニシリン以外には大規模な利用面が現れず、余り話題は見当たらないやうである。之に対し海外 (主として米国であるが) では、引続き果物ジュース類の真空乾燥又は濃縮が盛な様で新しいPilot plantの研究等が行はれてゐる。蒸溜方面で注目されるのは高真空の分溜装置の研究が活溌になつて来た事で、一応出尽した感のある分子蒸溜に代り、今後真空蒸溜の話題の一中心になる事と思はれる。
以下国内の真空蒸溜、海外の真空蒸溜、真空乾燥の順で、昨年度の文献その他を拾つて見る事にするが、準備期間が短かかつた為充分文献を網羅出来ず、不完全になつた事をお断りしておく。
抄録全体を表示