ネットワーク理論における単目的最短路問題については今日まで様々なアルゴリズムが提案されてきた.しかし輸送問題や大規模工業システムなどの複雑なシステムにおける意思決定に際して, ある1つの目的関数での最短路が最適解とならない場合がしばしばある.一般化された問題においては, 目的関数は二目的関数あるいはそれ以上の多目的関数として表現される場合がある.例えば自動車の経路選択問題において, 有料の高速道路と一般道路が混在するとき, 高速道路をとれば所要時間が短いが輸送コストは高く, 逆に一般道路をとれば所要時間が長いが輸送コストは低くなり, 目的関数は時間とコストの2つになる.このような背景のもとに, 複雑で実際的な場面において多目的 (所要時間, 運賃, 便数等) を考慮した問題の最適化理論および研究が重視されるようになった.
本研究ではまず, 任意のネットワークにおいてある始点から終点までの単目的問題について, 与えられた許容長内で可能なすべての経路を算出する方法 (単目的制約k最短路問題と呼ぶ) を考察する.この方法に関して基本解法と分割法の2つの方法を考案する.
次に単目的制約k最短路問題を拡張し, 二目的制約k最短路問題の解法を提案する.これは各アークに2つの長さ (例えば時間とコスト) がある任意のネットワークにおいて, ある始点から終点の問でとりうる経路のそれぞれの合計の長さが与えられた両許容長以下となるすべてのものを算出する問題である.これに関しても基本解法と分割法の2つの方法を考察する.
さらにこの二目的制約k最短路問題を用いて二目的最短路問題の解法を提案する.この問題は各アークに2つの長さがある任意のネットワークにおいて, 始点から終点へ至る経路の集合の中からパレート集合を求めるものである.これにより意思決定者は経路のパレート集合から自己の選好によって最良の経路を選択しうる.
最後にFORTRAN 77でコード化した以上各問題のプログラムを用いてEWS上での計算結果を示す.
抄録全体を表示