この研究は脳循環における第2調波造影法を評価した最初のものである.肺の毛細血管を通るUCA (ultrasound contrast agent) はもともと血液の背景反射を増強するよう考案された.椎骨脳底動脈系でのUCAの使用により描出される小脳動脈の数が増える.Harmonic Imaging (第2調波によるtranscranial color-coded sonography, 2ndTCCS) はUCAのガスバブルが超音波診断に使われる周波数で非常によく反響して発振周波数の調波すなわち倍数波を生じる現象を利用したものである.第2調波ドプラシステムは一つの周波数 (fundamental) を送信しその倍の周波数 (second harmonic, 第2調波) を受信する.組織は基礎波の周波数に反応し, UCAのバブルは基礎波の周波数と第2調波の周波数に反応する.このシステムはUCAから基礎波 (ノイズ) を取り除き第2調波の周波数のみを残しsignal to noise比, signal to tissueのアーテイファクトを減少させる.
Duplexシステム (HP SONOS 2500) に1.8/3.6MHz (第2調波) と2.5MHz (通常) のセクタートランスヂューサをつないで用いた.13人の健康なボランティアにLevovist 6.5ml; 400mg/mLを1mL/sの速度で静注し第2調波および通常のカラーduplex imagingを行った.
2ndTCCSと通常TCCSを比較すると前者では空間分解能が著しく改善し, より多くの小脳の動脈 (35対31) , 分枝, 静脈叢が描出され, blooming artifact (カラー信号の過剰な増強) の持続も著明に減少 (7.9対29.9sec) , 診断上有用な信号増強の持続 (248.5対117.4sec) が増加, しかし倍の受診周波数を用いるたあ最大探査深度は減少 (8.4対9.3cm) した.椎骨動脈・脳底動脈の収縮期血流速度はLevovist静注の通常TCCSではartifactのため著明に上昇するが, 2ndTCCSではUCAなしのTCCSと大体同じ速度を示した.
1.8MHzの基礎周波数を用いてLevovistと2ndTCCSを組み合わせると診断上有用な信号増強の持続が長くなり, 空間分解能が改善され, 椎骨動脈系の診断情報が多くなることが示された.
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