Color transcranial Doppler ultrasoundの臨床応用は, Willis輪を中心とした頭蓋内脳主幹動脈の把握や脳動静脈奇形, 脳腫瘍, 脳動脈瘤などの非侵襲的な描出を可能にしている.近年導入され始めた“color Doppler energy”とか“power Doppler”とか呼ばれるcolor transcranial Doppler ultrasoundは、実質臓器のより細かい動脈や静脈の描出を可能にし、さらにROIを設定することにより任意の部位のspectral Doppler blood velocity waveformをも得ることができるように改良されてきている.本研究ではこのcolor transcranial“power”Doppler ultrasoundをクモ膜下出血症例に応用し、脳動脈瘤に対する診断能の検討を試みている.対象は40例で、脳血管撮影所見をgold standardとして比較検討している.超音波ドップラー装置は, model XP10V (Acuson Corp., Mountain View, CA) を用いている.超音波ドップラー検査は経側頭骨で行い, 撮像は冠状断と水平断で行っている.動脈瘤の大きさを水平断の静止画像上でelectric calipersを用いて計測し, 心拍周期によるexpasibilityを (maximum-minimum aneurysm area) / (maximum+minimum aneurysmarea) ×0.5で定量化している.Color transcranial“power”Doppler ultrasoudによる動脈瘤の同定は次のcriteriaで行っている. (1) 異常な脳血管が予測できない部位での異常なカラーの描出, (2) 異常な血管のbulging, (3) 正常の脳血管に比してexpansibilityが明かに大きい血管部位.この症例群では脳血管撮影にて31例に37個の脳動脈瘤を診断し, 9例では動脈瘤を認あていない.この脳血管撮影所見とcolor transcranial“power”Doppler ultrasound所見が完全な一致をみたのは31例で, 残り9例のうち5例では十分はDoppler ultrasound画像が得られいない.この37個の動脈瘤のうち26個はcolor transcranial“power”Doppler ultrasoundで診断出来ている.一方false-positiveの診断は, 1例に認めているが, 著明な脳血管攣縮が前大脳動脈, 中大脳動脈に生じていたbasilar tipの動脈瘤症例であった.動脈瘤の心拍周期に伴う大きさの変化に関して動脈瘤のexpansibilityは53%で, 動脈瘤近傍の正常動脈のexpansibilityは20%で, 両群間に有意な差を認めている.以上よりcolor transcranial“power” Doppler ultrasoundは, 従来のDoppler imagingよりの頭蓋内血流にsensitiveであり, 動脈瘤の診断やfollow upまた脳血管攣縮の検索に有用性が高いことを示唆している.
Laboratoryphantommodelsではpulsatilityは近位部と遠位部の両方の血管抵抗に影響されうることが示されている.近位部の血管抵抗が上昇すると血流のpulsatilityは低下し, 遠位部の血管抵抗が上昇すると血流のpulsatilityは上昇する.TranscranialDopplerの臨床研究では, 遠位部の脳血管抵抗が上昇した時に血流速波形のpulsatilityが上昇すると指摘されている.しかし, pulsatilityindex (PI) から脳血管抵抗を定量的に予測することが可能かどうかにっいては証明されていない.脳血管抵抗とPIの関係は動脈血圧のpulsatilityの変化と脳主幹動脈のmechanoelasticpropertiesの変化により影響を受ける可能性がある.この関係を明らかにするため, 本論文では動物実験modelで, 動脈血のCO2濃度の上昇及び頭蓋内潅流圧の低下により, 脳血管抵抗の低下を引き起こしPI及びresistantindex (RI) の変化を検討している.方法は, 12匹のNewZealandwhiterabbitsを用い気管切開, 全身麻酔下に, 8-MHzのprobeを用いtranscranialDopplerで脳底動脈の流速を測定している.また大脳皮質の血流をlaserDopplerで計測し, 頭蓋内圧をmonitorしている.動脈血圧や呼気終末のCO2濃度も持続的に測定している.以上より脳血管抵抗 (脳潅流圧/大脳皮質の血流量) とGoslingPulsatilityIndex (PI, 血流速波形のamplitude/平均血流速) を算出している.
対象を次の4groupに分けて検討している.Group1: 動脈血CO2濃度を変える.Group2: 脱血により脳潅流圧を変化させる.Group3: Short-actingなganglionblockerであるtrimetaphan静注法により一過性に血圧を変化させる.Group4: くも膜下腔に生食を注入する方法により頭蓋内圧を変化させる.Grouplの過換気状態では, 大脳皮質の脳血管抵抗とPIは有意な正の相関があった.Group1以外の脳潅流圧が低下した他の3groupのすべてで, pulsatilityindexと脳血管抵抗の間に有意な負の相関が見られた.PIはすべての状況下において単純に脳血管抵抗の指標になるとは断定出来ないと結論づけている.
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