2019 年 3 月に初めて、厚生労働省から保険者ごとの特定健康診査・特定保健指導の実施状況が公表された1。高齢化がますます進展し、社会保障費が増大する中で、保険者の予防・健康づくりの取組により健康増進や医療費の適正化が期待されている。糖尿病など生活習慣病等の発症・重症化の予防を目的とする特定健康診査(健診)と特定保健指導は、保険者が共通で取り組む保健事業として、強化されている取組の一つだ。全保険者データの公表は、保険者の責任を明確にする観点から行われた施策であり、保険者に取組を促す可能性がある点で評価できる。しかしながら、単に個別データを羅列して公表するだけでは保険者の行動変容につながらない。データは、分析してわかりやすく「見える化」し、保険者の取組推進に向けて生かされる必要がある。保険者による実施状況の違いはどの程度存在するのか。保険者の属性や地域によってどのような違いがあるのか。医療費への影響は認められるのか。こうした視点でデータを観察することで、予防医療をめぐる保険者の取組の現状や問題が見えてくる。そこで、本稿では、同時に初めて公表された全保険者の後発医薬品使用割合のデータも合わせて、保険者ごとの取組状況を整理し、課題を探ることとした。1.では特定健診・保健指導の実施状況について、2.では後発医薬品の使用状況について、各医療保険制度や個別の保険者ごとの特徴を示し、3.で分析を総括して今後に向けた提言をする。
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