【目的】冠動脈バイパス手術(CABG)においてno-touch(NT) techniqueによる大伏在静脈グラフト(SVG)採取をEndoscopic vessel harvesting(EVH)で行うことで,創部合併症が軽減可能か,またOpen vessel harvesting(OVH)によるNT-SVGのように開存性向上が期待できるかをその機序を含めて考察する.【方法】2018年8月から2020年2月の期間にEVHでSVGを採取したCABG症例44例を対象とした(緊急手術症例は除外).EVHの採取法により血管周囲組織を離後にシリンジ拡張を行うconventional群(C群),血管周囲組織を温存したpedicleとして採取後に動脈圧拡張を行うNT群に分類した.動脈圧拡張は大腿動脈圧を使用した.術後画像評価,創部合併症やその関連因子を検討した.SVG径を術前は下肢血管エコーにて3点で測定し,術後は冠動脈CTにて7点で測定し,血管径の均一性を解析(Mann-Whitney U検定)した.【結果】採取法による内訳はC群23例,NT群21例であった.患者背景(年齢,性別,糖尿病,インスリン使用,維持透析),術後入院期間に有意差は認めず,全症例において創部合併症や早期閉塞は認めなかった.術前のSVG径は各群で有意なばらつきを認めなかったが,術後はNT群で有意に少なかった.(
p < 0.05).病理組織学的評価を行ったところ,EVHで採取したNT-SVGでもOVHによるものと同様に血管構造が維持されていた.【結論】EVHによるNT techniqueは創部合併症が少なく,長期開存が期待できるグラフト採取法となる可能性が示唆された.
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