低分化癌と高異型度分化癌は,甲状腺腫瘍WHO病理分類第5版の組織学的分類の中で,高異型度濾胞細胞由来非未分化癌(High-grade follicular cell-derived non-anaplastic thyroid carcinoma)の範疇に含まれる。甲状腺癌取扱い規約第9版(新規約)では,低分化癌は従前どおり濾胞癌や乳頭癌と並列に分類されたが,本邦では頻度の低い高異型度分化癌は低分化癌に付記されて説明されている。この亜型は高分化癌(乳頭癌,濾胞癌,膨大細胞癌)と未分化癌との中間の予後を示す甲状腺癌の一群で,組織学的に分裂像の亢進や腫瘍壊死を示す未分化癌成分を含まない濾胞細胞起源の癌と定義される。分子病理学的には高分化癌からの多段階発癌が示唆され,driver変異として,低分化癌は濾胞癌からの進展を反映するRAS系が,高異型度分化癌は乳頭癌からの進展を反映するBRAF系の頻度が高い。後期イベントとしてTERT promoter変異やTP53変異が知られ,さらに未分化転化や放射性ヨード治療耐性と関連する。個々のゲノム変化を標的とした新規治療戦略が必要とされていて,臨床医と病理医の十分なコミュニケーションにより,この新しい組織分類の正確な理解が求められる。
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