日本内分泌外科学会雑誌
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目次
編集委員会
特集1
  • 中島 正洋
    2024 年 41 巻 1 号 p. 1-2
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/23
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  • 菅間 博
    2024 年 41 巻 1 号 p. 3-8
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/23
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    腺腫様甲状腺腫は第5版WHO分類では,濾胞結節性疾患の名称で良性腫瘍に組み入れられるが,第9版甲状腺癌取扱い規約ではこれまでと同じように腫瘍様病変に分類される。腺腫様甲状腺腫の発病機序は多様であり,知見の集積とともに病名についての議論を深める必要がある。濾胞腺腫はクローナルな腫瘍性増殖で,圧排性に増殖し線維性被膜を形成する。遺伝子変化としてRAS系の遺伝子変異がみられることが多いが,機能亢進性腺腫ではTSH受容体遺伝子の変異がみられる。腺腫様甲状腺腫との鑑別は病理形態的所見で総合的になされる。乳頭癌様核所見を伴う非浸潤性濾胞型腫瘍(NIFTP)および悪性度不明な腫瘍(UMP)との鑑別点となる,被膜,血管浸潤と乳頭癌の核所見の判定基準には日本と米国で扱い方に差があり,注意が必要である。膨大細胞腺腫は細胞質に多量なミトコンドリアが存在する腺腫で,電子伝達系に関わる遺伝子に異常が認められる。

  • 近藤 哲夫
    2024 年 41 巻 1 号 p. 9-13
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/23
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    甲状腺の低リスク腫瘍は第5版WHO分類(2022年)で定められた新しいカテゴリーである。そのカテゴリーに含まれるのは硝子化索状腫瘍 hyalinizing trabecular tumor(HTT)と 第4版WHO分類(2017年)で良性と悪性の境界病変として提唱された乳頭癌様核を有する非浸潤性濾胞型甲状腺腫瘍noninvasive follicular thyroid neoplasm with papillary-like nuclear features(NIFTP)と悪性度不明uncertain malignant potential(UMP)と総称される分化型濾胞型腫瘍の一群である。第9版甲状腺癌取扱い規約(2023年)においてもNIFTPとUMPが組織学的分類に新たに採用され,HTTと合わせて低リスク腫瘍のカテゴリーが設けられた。本稿では低リスク腫瘍の中のNIFTP,UMPについて概説する。

  • 亀山 香織
    2024 年 41 巻 1 号 p. 14-17
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/23
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    濾胞癌の定義には前の版と変更はない。すなわち濾胞細胞由来の腫瘍で,乳頭癌の核所見を欠き,さらに組織学的に被膜浸潤あるいは血管浸潤が認められることである。濾胞癌は浸潤様式により,微少浸潤性濾胞癌,被包化血管浸潤性濾胞癌,広汎浸潤性濾胞癌に分類される。今回の規約では,1)濾胞癌の増殖パターンを示し,さらに核分裂像が5個/2mm2以上確認できるもの,あるいは腫瘍壊死を認めるものを高異型度分化癌とした。2)これまで好酸性細胞型濾胞癌としていた腫瘍を膨大細胞癌という名称に変更した。3)濾胞癌で認められる遺伝子異常につき記載した。といった変更を行っている。

  • 大橋 隆治
    2024 年 41 巻 1 号 p. 18-22
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/23
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    甲状腺癌取扱い規約第9版における甲状腺乳頭癌の診断項目に大きな変更はないが,新たに「低リスク腫瘍」の概念が導入されたことに伴い,核所見の記載方法や濾胞型乳頭癌の概念に若干の変更が加えられている。診断必須項目ではないが,主な遺伝子変異や免疫染色に関する情報も追記された。乳頭癌の亜型では,従来の濾胞型,大濾胞型,好酸性細胞型,びまん性硬化型,高細胞型,充実型,ボブネイル型に加え,円柱細胞型が新たに加わった。旧規約にあった篩型亜型は乳頭癌亜型から外れ,独立した腫瘍として記載されている。

  • 中島 正洋
    2024 年 41 巻 1 号 p. 23-25
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/23
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    低分化癌と高異型度分化癌は,甲状腺腫瘍WHO病理分類第5版の組織学的分類の中で,高異型度濾胞細胞由来非未分化癌(High-grade follicular cell-derived non-anaplastic thyroid carcinoma)の範疇に含まれる。甲状腺癌取扱い規約第9版(新規約)では,低分化癌は従前どおり濾胞癌や乳頭癌と並列に分類されたが,本邦では頻度の低い高異型度分化癌は低分化癌に付記されて説明されている。この亜型は高分化癌(乳頭癌,濾胞癌,膨大細胞癌)と未分化癌との中間の予後を示す甲状腺癌の一群で,組織学的に分裂像の亢進や腫瘍壊死を示す未分化癌成分を含まない濾胞細胞起源の癌と定義される。分子病理学的には高分化癌からの多段階発癌が示唆され,driver変異として,低分化癌は濾胞癌からの進展を反映するRAS系が,高異型度分化癌は乳頭癌からの進展を反映するBRAF系の頻度が高い。後期イベントとしてTERT promoter変異やTP53変異が知られ,さらに未分化転化や放射性ヨード治療耐性と関連する。個々のゲノム変化を標的とした新規治療戦略が必要とされていて,臨床医と病理医の十分なコミュニケーションにより,この新しい組織分類の正確な理解が求められる。

  • 今村 好章
    2024 年 41 巻 1 号 p. 26-30
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/23
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    甲状腺腫瘍の新しいWHO分類第5版が2022年秋にβ版としてインターネットで公開された。その改訂を踏まえ,2023年10月に甲状腺癌取扱い規約第9版が発刊された。本稿では未分化癌・扁平上皮癌および髄様癌における改訂のポイントを概説する。

  • 千葉 知宏
    2024 年 41 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/23
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    甲状腺癌取扱い規約第9版が発刊された。WHO分類第5版に合わせ,腫瘍細胞の起源と悪性度,ドライバー遺伝子変異を意識した分類に改訂された。「その他の腫瘍」の枠組みも,固有のドライバー遺伝子と腫瘍細胞の分化・起源により整理された。形態学的な組織分類である原則は変わらないが,免疫染色による各種分化マーカーの検索や遺伝子解析の重要性が高まっている。本稿では,甲状腺腫瘍の遺伝子異常を総括し,「その他の腫瘍」の改訂点と診断の要点を解説する。

  • 廣川 満良
    2024 年 41 巻 1 号 p. 36-38
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/23
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    細胞診はベセスダシステム第3版にほぼ準拠して微修正された。「濾胞上皮細胞」は「濾胞細胞」に,「好酸性細胞型濾胞性腫瘍」は「膨大細胞腫瘍」に名称が変更された。小濾胞状集塊にて乳頭癌の核所見が軽度みられる場合は意義不明ではなく,濾胞性腫瘍として報告されることになった。硝子化索状腫瘍は意義不明に分類されることになった。ベセスダシステムとの相違点において,区分の名称と乳頭癌の核所見がみられる濾胞性病変判定に関する記載が削除された。今後の改訂にあたっては,世界基準であるベセスダシステムとの整合性を保ちつつも,本邦での特殊性や利便性を考慮した報告様式を構築することに留意し,悪性の危険度や臨床的対応を盛り込むべきであろう。

特集2
  • 井川 掌
    2024 年 41 巻 1 号 p. 39
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/23
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  • 馬場 隆太, 大野 晴也
    2024 年 41 巻 1 号 p. 40-45
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/23
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    ACTH非依存性Cushing症候群の多くは片側のコルチゾール産生副腎皮質腺腫(CPA)から過剰にコルチゾールが分泌されることによって生じる。CPAの病因は長い間不明のままだったが,最近の研究で,PRKACA遺伝子,GNAS遺伝子,CTNNB1遺伝子に変異を認めることが証明された。PRKACA遺伝子はLeu206,GNAS遺伝子はArg201,CTNNB1遺伝子はSer45に変異のhot spotがあり,PRKACA遺伝子変異,GNAS遺伝子変異はcAMP-PKAシグナル経路の活性化,CTNNB1遺伝子変異はWNT-βカテニン経路の活性化に関連している。副腎性Cushing症候群においてPRKACA変異は34~66%,GNA変異は5~17%,CTNNB1変異は4~22%程度に認められ,PRKACA変異CPAはそうでないものと比較し,コルチゾール分泌能が高く,腫瘍径が小さく,若年であると報告されている。さらに,PRKACA変異CPAではステロイド合成酵素の発現が増加しているなど解明が進んでいる。

  • 西本 紘嗣郎, 向井 邦晃
    2024 年 41 巻 1 号 p. 46-49
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/23
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    PAは,二次性高血圧症の原因として最も高頻度の疾患として知られ,高血圧症患者の5%以上を占める。PAの病型分類の中で,症例の大多数を占めるのは,片側性の病態であるアルドステロン産生腺腫 (aldosterone-producing adenoma:APA)と両側性の病態である特発性アルドステロン症(idiopathic hyperaldosteronism:IHA)である。稀な病型として,家族性アルドステロン症,片側性副腎皮質過形成,アルドステロン産生副腎皮質癌,若年性非遺伝性などがある。近年,遺伝子解析技術の進歩により,PAの原因と推定される遺伝子異常が判明しつつある。本稿では,内分泌外科医が押さえておきたいAPAの病理像,APAの遺伝子変異,アルドステロン産生細胞クラスター(aldosterone-producing cell cluster:APCC)とその遺伝子変異,APCCからIHAおよびAPAへの進展スキーム,および家族性アルドステロン症について概説する。

  • 奥野 陽亮
    2024 年 41 巻 1 号 p. 50-53
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/23
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    原発性両側大結節性副腎皮質過形成(PBMAH)は,(サブクリニカル)クッシング症候群に加え,両側副腎に1cm以上の多発結節を認める疾患群である。これまで,症候群に伴うPBMAHの原因遺伝子として,MEN1,APC,FHなどが知られていたが,近年,GIP依存性PBMAHの原因遺伝子としてヒストン脱メチル化酵素KDM1Aが,それ以外の孤発性PBMAHの原因遺伝子としてARMC5が同定された。ARMC5は機能未知因子であったが,2020年,CUL3と複合体と形成してユビキチンリガーゼを形成することが明らかとなり,2022年,その標的タンパクとして,われわれは全長型SREBFを,他のグループからはRPB1およびNRF1が同定された。本項では,これらPBMAHに伴う遺伝子変異を概説するとともに,今後の課題や展望について述べる。

  • 木島 敏樹, 釜井 隆男
    2024 年 41 巻 1 号 p. 54-57
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/23
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    副腎皮質癌は,極めて稀かつ悪性度の高い腫瘍であり,根治切除以外に有効な治療法は確立しておらず,転移例に対する有効な薬物療法は限られている。副腎皮質癌は,腫瘍内に広範かつ不均一に複雑な遺伝子異常を伴うことが特徴である。一部の症例は遺伝性腫瘍症候群と関連することが知られているが,孤発例を含めて副腎皮質癌に特徴的な遺伝子異常が示されており,p53/Rb1経路,Wnt/β-catenin経路,IGF/mTOR経路などに代表される。さらに近年の包括的遺伝子解析により,副腎皮質癌の予後と関わる分子サブタイプが提唱されている。遺伝子情報に基づく個別化医療は未だ実現されていないが,副腎皮質癌を始めとする希少癌を集めゲノムプロファイリング検査を施行し,癌種横断的なバスケット試験を行うことにより,個別化医療の開発が進められている。

  • 藤澤 泰子
    2024 年 41 巻 1 号 p. 58-61
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/23
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    先天性副腎皮質過形成症は,副腎皮質に発現する酵素をコードする遺伝子の異常によって酵素が欠損することで,コルチゾールの分泌不全とフィードバックによる下垂体ACTHの過剰分泌がおきる疾患であり,5疾患が知られているが,そのほとんどを占めるのは21-水酸化酵素欠損症である。21水酸化酵素欠損症は新生児マススクリーニングの対象疾患であることから,一般的には新生児~乳児期に発見されうる疾患であるが,ときに軽症の病型において,男性化兆候や月経異常など小児期以降に診断されるケースもある。また,他の稀な病型で若年性の高血圧を特徴とするものもあり,幅広い年齢層で発見されうる疾患群である。本稿では,先天性副腎皮質過形成症について,病態や遺伝学的背景について概説した。

特別寄稿
  • 杉谷 巌
    2024 年 41 巻 1 号 p. 62-64
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/23
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    甲状腺癌取扱い規約第9版(日本内分泌外科学会・日本甲状腺病理学会編)が2023年10月に発行された。臨床的事項の主な改訂点について解説する。TNM分類は,cTNM(臨床所見),sTNM(術中所見),pTNM(病理所見)に区分するが,甲状腺癌の予後予測には手術時に判定するsTNM分類およびsEx分類(甲状腺腫瘍の肉眼的腺外浸潤所見)を活用するのがよいことを明記した。sEx分類は日本の規約に特有のものであり,浸潤臓器のみならず深達度も考慮するものとした。N分類については,リンパ節転移の大きさとリンパ節外浸潤の有無を勘案した細分類を採用した。また,上縦隔リンパ節の定義は手術手技によるものから,解剖学的位置によるものに変更した。国際基準であるUICCのTNM分類との齟齬が生じないよう工夫しつつ,甲状腺癌の記録上,重要と考える事項を盛り込んだ改訂となっている。

症例報告
  • 林原 紀明, 小川 利久, 辻 英一, 丹羽 隆善, 山口 七夏, 西尾 美紀, 星 由賀里, 藤原 華子, 吉方 茉里江
    2024 年 41 巻 1 号 p. 65-69
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/23
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    症例は90歳女性。甲状腺乳頭癌にて甲状腺右葉切除,D1郭清術の既往あり。2016年11月に咽頭痛と嚥下障害が出現し,経口摂取が困難な状況となったため,2017年4月に当院を受診。CTにて右外側咽頭後リンパ節腫大を認め,甲状腺乳頭癌の外側咽頭後リンパ節再発の診断となった。外側咽頭後リンパ節再発に対する治療は外科的摘出とされるが,摘出後の合併症出現の可能性も高く,高齢者には過大な侵襲となりうること,また本人のADLが日常生活に介助を要し単身での入院ができず放射性ヨウ素内用療法も困難な状況であったことより,局所制御目的にレンバチニブの投与を開始した。レンバチニブ4mg/日の維持投与量にて腫瘍の縮小を認め,約15カ月間にわたりリンパ節腫大による症状を軽減しえた。本症例のように,高齢者や合併症にて外科治療や放射性ヨウ素内用療法が困難な場合にはレンバチニブ内服治療は有効な治療手段となり得ると思われた。

  • 西塔 誠幸, 坂野 福奈, 伊藤 由季絵, 井戸 美来, 後藤 真奈美, 安藤 孝人, 毛利 有佳子, 高阪 絢子, 藤井 公人, 今井 常 ...
    2024 年 41 巻 1 号 p. 70-75
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/23
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    症例は70代後半の女性。3年前から腺腫様甲状腺腫を指摘されていたが腫瘤の増大あり紹介。最大径45mmあり2カ月後の手術を予定したが,待機中に腫瘤の急速増大,疼痛,嗄声,誤嚥を発症した。喉頭ファイバーで右声帯麻痺を認めた。とろみを加えるなどで経口摂取は可能だった。誤嚥が軽快した4週後に甲状腺右葉切除術を施行。右反回神経の腫瘍中枢測神経刺激で声帯運動は認めなかったが甲状軟骨下角の腫瘍末梢測刺激では声帯の動きを認めた。神経は腫瘍に密着していたが温存できた。術後は誤嚥など合併症なく経過し1カ月後の喉頭ファイバーで声帯麻痺は回復していた。周術期合併症が懸念される高齢者の甲状腺良性結節に起因する急性反回神経麻痺に対しては,誤嚥を防止する対策を取りつつ準緊急手術を行う選択が有効と考えられた。

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