リハビリテイション心理学研究
Online ISSN : 2436-6234
Print ISSN : 0389-5599
47 巻, 1 号
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原著
  • ――身体運動への注意とその実行における順向性制御・反応性制御の寄与の違い――
    藤川 卓也, RUSSELL SARWAR KABIR, 安部 主晃, 服巻 豊
    原稿種別: 原著
    2021 年 47 巻 1 号 p. 1-15
    発行日: 2021/12/08
    公開日: 2022/01/17
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,動作法と認知制御の関係を明らかにすることであった。Dual Mechanism of Control Framework(Braver, 2012)に基づき,トップダウンの準備的な認知処理を示す順向性制御とボトムアップの即時的な認知処理を示す反応性制御の2つの認知制御戦略を,それぞれAX version Continuous Performance Task と修正ストループ課題を用いて測定した。28名の参加者が動作法を行う動作法群と能動的な比較対象として運動を行う運動群に無作為に割当てられ,動作法もしくは運動を行う前後で認知課題を遂行した。2つの認知課題は別日で実施した。結果,動作法群においてのみ,事前テストから事後テストにかけて,修正ストループ課題の不一致試行の誤答率が減少し,反応性制御の向上が確認された。また,動作法群・運動群の両群で,事前テストから事後テストにかけて,AX-CPTの反応潜時のBehavioral Shift Indexが増加し,順向性制御の向上が確認された。以上より,動作法における動作は反応性制御の駆動によって特徴づけられていた。

事例研究
  • 島岡 恵, 干川 隆, 本吉 大介
    原稿種別: 事例研究
    2021 年 47 巻 1 号 p. 17-28
    発行日: 2021/12/08
    公開日: 2022/01/17
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,脳性まひのある生徒の身体の動きに及ぼす動作法とミラーセラピーの効果を検討することであった。23回にわたって実施された試行は,指導の内容からA期(動作法のみ),B期(動作法及び下肢のMT),C期(動作法及び上下肢のMT)に分けられた。指導の結果,対象児はB期から右足の背屈運動の改善があり,手指操作能力分類システム(MACS)による評価では,BL期に比べてC期に14.5点の改善が見られた。本研究の結果から,対象児が鏡を見ながら自己の運動に修正を加えていくことで指先の動きや足首の背屈運動が改善されたことから,ミラーニューロンシステムの活性化が行われたと考察した。結果は,脳性まひ者に対して動作法とミラーセラピーを用いることで,その両方の取り組みの相乗効果が期待されることを示唆した。

  • 岩男 尚美, 遠矢 浩一, 古賀 聡
    原稿種別: 事例研究
    2021 年 47 巻 1 号 p. 29-41
    発行日: 2021/12/08
    公開日: 2022/01/17
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,強度の全身伸展筋緊張を呈する脳性麻痺児に対して動作法を用いて関わった心理リハビリテイションキャンプの事例経過を報告し,児の動作コントロールの獲得に伴う身体図式の明確化と自己の発達について考察することであった。トレーニーは心理リハビリテイションキャンプに初めて参加した特別支援学校小学部1年の7歳女児Aであった。Aは,強度の全身伸展筋緊張のために,一度身体が緊張すると自己弛緩することが難しかった。トレーナーらは,不本意にAの股関節が緊張した際に,Aが緊張に気づき,自己弛緩感を獲得することを目指した。また,股関節を深く屈げた状態での「タテ系」では,Aが自分自身の身体の各部位の適切な力の入れ方を学び,コントロールすることを目指した。リラクセーションと「タテ系」に取り組むなかで,Aは自らの身体図式を覚知し,環境に能動的に働きかける主体としての自己の確立が促されたと思われた。

  • 古閑 詩織, 干川 隆
    原稿種別: 事例研究
    2021 年 47 巻 1 号 p. 43-54
    発行日: 2021/12/08
    公開日: 2022/01/17
    ジャーナル フリー

    本研究では,特別支援学校に在籍する自閉スペクトラム症の小学1年生の女児に動作法指導パッケージを実施し,要求語形成に及ぼす効果を検討した。その際,学校における不適切行動の生起との関連もあわせて検討を行った。指導パッケージでは,16セッションにわたって動作法に加え情緒的交流遊びと音楽を通したやり取りの中で要求語を促した。その結果,動作課題遂行時の視線一致の割合が増加し,共同注意の発達が認められた。学校場面においては,要求語の増加に伴い不適切行動が減少した。この結果から,動作法指導パッケージの効果を,要求語形成と行動面に及ぼす影響の観点から考察した。本研究の結果,動作法により人と関わりたい気持ちを促進することが要求語形成につながり,学校場面においても変容を与えることが示唆された。

  • 酒井 葵, 干川 隆
    原稿種別: 事例研究
    2021 年 47 巻 1 号 p. 55-66
    発行日: 2021/12/08
    公開日: 2022/01/17
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,自閉症児の要求言語行動の形成に及ぼす動作法指導パッケージの効果を検討することであった。対象児は,特別支援学校小学部1年生の自閉症女児であり,共同注意項目得点票(JA得点)では12ヶ月の注意の操作の段階であった。対象児は,動作法でのからだを通じたやりとり,情動的交流遊びとタブレットでの要求言語行動の形成,店員役と客役を演じる共同行為ルーティンから成る動作法指導パッケージを19セッション受けた。ベースライン期と評価期でのJA得点と被験者の対人相互作用の違いが比較され,進捗状況の変化として動作法とキャッチボールのアイコンタクトが増加し,要求言語行動の割合が増加し,ロールプレイでの正しい反応の割合の増加が示された。その結果,被験者は共同注意得点で15ヶ月のシンボルの形成の段階まで成長した。これらの結果は,動作法と共同注意の発達と要求言語行動の形成との関連から考察された。

資料
  • MARI TANAKA
    原稿種別: Brief Report
    2021 年 47 巻 1 号 p. 67-73
    発行日: 2021/12/08
    公開日: 2022/01/17
    ジャーナル フリー

    This study aimed to compare dimensions of causal attributions-locus of control, stability and controllability-between the mothers of children with autism spectrum disorder (ASD) and those of children with typical development in relation to children’s well-adjusted and maladjusted behaviors. Participants were 21 mothers of elementary school children with ASD and 55 mothers of elementary school children with typical development. First, the mothers of children with ASD attributed well-adjusted behaviors to an external locus of control and rated them as having low levels of stability. Second, the mothers of children with ASD attributed maladjusted behaviors with a low level of controllability. The mothers of children with ASD exhibited a positive depressive attributional style, suggesting an association with child-rearing stress and therefore the need for parent training and deeper understanding of children in terms of causal attributions for children’s behavior.

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