Stars and Galaxies
Online ISSN : 2434-270X
5 巻
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 磯部 洋明
    2022 年 5 巻 p. 1-
    発行日: 2022/12/31
    公開日: 2023/02/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿はハンセン病療養所である国立療養所長島愛生園に1949年に設置され、1960年頃まで入所者による天文観測が行われていた長島天文台に関する記録をまとめたものである。同天文台は長島愛生園の気象観測所の一部として設置され、主に太陽黒点の観測と恒星等の掩蔽観測を行う他、園内の入所者や職員に向けた観望会も開催していた。天文台の設置と観測の指導にあたっては、京都大学花山天文台の台長であった山本一清と彗星観測者として知られる本田実が深く関わっており、観測記録は山本および東京天文台に送付されていた。ハンセン病療養所という特異な環境における長島天文台の天文観測はアマチュア天文学の歴史とハンセン病療養所の歴史の双方の観点から他に類例を見ない、後世にその記録を残すべきものである。
  • 樋口 あや
    2022 年 5 巻 p. 2-
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/10
    ジャーナル オープンアクセス
    東京電機大学理工学部理学系物理学コースの天文学研究室は2021年4月に新設された研究室である。本 学初の観測天文学を推進する研究室であるため、研究・教育の方向性を模索しつつ研究室運営を行ってい る。本論文では、研究室立ち上げの際に導入した、電波観測実習と光赤外線観測実習などの活動を報告し、 大学における天文学教育の需要と影響、そして課題について議論する。
  • 鈴木 和博, 加藤 泰男, 岡本 貞夫
    2022 年 5 巻 p. 3-
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/10
    ジャーナル オープンアクセス
    2021年12月13日に出現したふたご座流星群の2流星を送信点の東部20 km程度以内離れた3か所に市販 のVHF受信機を設置し,10Wで継続的に送信されたVHFハム電波の流星エコーをUSB型式で受信,周波数 解析後,波形を画像化した.送信波が流星の頭部で反射された流星ヘッドエコーには流星物質がその観測 速度に応じたドップラー効果を受けたドップラー周波数が確認できる.これら2流星はわが国の流星観測 者ネットワークによって光学的な多点観測に成功しており,出現高度や観測速度などの種々光学的経路諸 元が公開されている.筆者らは3受信点における,この2流星の電波観測によって得られた,ある時点での ドップラー周波数や,流星経路と送受信電波が直交する点(f0点)に流星頭部が到達する時刻などをフリー のFFTソフトウェアを使って詳細に解析した.その結果,電波観測データから計算・導出された電波流星 の経路,観測速度などが,公表された光学的な流星経路諸元とよく一致していることが確かめられた.こ のことは,この流星電波観測法が昼間や天候不順時における光学的な流星観測法の代役を一部果たすこと ができるということを意味する.全国に何か所も観測機器を設置すれば,これまでとらえられなかった昼 間や天候不順時におけるわが国への隕石落下の一部を見逃さないであろう.
  • Yoonsoo Bach, Masateru Ishiguro, Jun Takahash, Jooyeon Geem
    2022 年 5 巻 p. 4-
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/10
    ジャーナル オープンアクセス
    A systematic way of data reduction for the NIC polarimetry mode has been devised and implemented to an open software called NICpolpy in the programming language python (tested on version 3.8–3.10 as of writing). On top of the classical methods, including vertical pattern removal, a new way of diagonal pattern (Fourier pattern) removal has been implemented. Each image undergoes four reduction steps, resulting in “level 1” to “level 4” products, as well as nightly calibration frames. A simple tutorial and in-depth descriptions are provided, as well as the descriptions of algorithms. The dome flat frames (taken on UT 2020-06-03) were analyzed, and the pixel positions vulnerable to flat error were found. Using the dark and flat frames, the detector parameters, gain factor (the conversion factor), and readout noise are also updated. We found gain factor and readout noise are likely constants over pixel or “quadrant”.
  • Tomoki Saito
    2022 年 5 巻 p. 5-
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/10
    ジャーナル オープンアクセス
    We present development of a new data reduction and analysis pipeline for Nishiharima Infrared Camera on 2 m Nayuta telescope. The new pipeline includes fundamental reduction procedures, as well as miscellaneous utilities to prepare the calibration frames such as dark and flatfield. We improved the subtraction procedures of the detectorspecific background patterns. These together improves the resulting photometric precision by a factor of ∼ 2, when using the newly obtained flat frames. We also find that the photometric precision can further be improved by introducing “ubercalibration”, resulting in the rms photometric errors of Δmag ∼ 0.02−0.03 for 14−15 mag (AB) in H-band, under the very best condition.
  • 高橋 隼
    2022 年 5 巻 p. 6-
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/10
    ジャーナル オープンアクセス
    2014年から2022年に得られたNICの観測画像を用いて、なゆた望遠鏡の指向誤差が指向方位にどのよ うに依存するかを調査し、方位角–高度平面上の指向誤差マップを作成した。作成した指向誤差マップに 基づき指向方位を補正することで、指向誤差の大きさが46′′ ± 19′′ から15′′ ± 8′′ に減少することを確認し た。この補正により、観測作業の時間的効率が高まり、また、観測の自動化がこれまでより容易になるで あろう。
  • 江戸幕府天文方・間重遠の観測との比較から
    岩橋 清美, 北井 礼三郎, 玉澤 春史
    2022 年 5 巻 p. 7-
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/10
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    安政五(1858)年に出現したドナティ彗星は、我が国では京都土御門家、江戸幕府天文方および大坂間家 において観測され、その観測記録が残されている。これらの史料は、いずれも西洋天文学に基づく観測記 録であり、高度・方位が数値として記されている。管見の限りでは、19世紀前半の彗星観測記録において、 京都土御門家・江戸幕府天文方・大坂間家の記録がそろっている事例はドナティ彗星のみである。これらの 観測記録から、彗星の日々の赤経・赤緯値を導出して、観測精度の相互比較を行った結果、(1)西欧の近代 的な観測精度に比して我が国観測所の観測精度は一段落ちるものの、(2)彗星の軌道を赤道座標値で±2度 の精度ではあるが、軌道の全貌を概ね把握できていたこと、(3)3観測所の中では土御門観測が一番優れて いたこと、(4)天文方、間の観測は期間が短く断定は難しいが、観測値にオフセットがあることが分った。 また、三観測所での測量の比較から、測量の基本的な考え方は相互に共通しており、時刻測定の方法 も共通の機器が使われているので、天体位置測量の精度の違いは、儀器の設置精度および堅牢性、眼視観 測者の熟練度によるところが大きいという結論を得た。
  • Tomohito Ohshima
    2022 年 5 巻 p. 8-
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/10
    ジャーナル オープンアクセス
    The secular variation in the interval of outbursts in the following six Z Cam-type dwarf novae (including the subtype IW And-type) is investigated: Z Cam, RX And, AH Her, HL CMa, SY Cnc, andWWCet. An analysis using the O − C diagram shows that the interval of outbursts is not steady in one system. The outburst properties before standstill are the decrease in outburst interval, enhancement of the magnitude in quiescence, and disappearance of the long outburst. Meanwhile, several objects have at least two typical intervals of outbursts. These characteristics are difficult to be explained only by the variation in mass transfer from the secondary.
  • 関根 章太, 井上 昭雄, 斎藤 智樹, 山中 郷史, 藤本 征史, 本原 顕太郎, 小西 真広, 高橋 英則, 小山 舜平, 櫛引 洸佑, ...
    2022 年 5 巻 p. 9-
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/10
    ジャーナル オープンアクセス
    初期宇宙において,超大質量ブラックホールの形成過程は未だ解明されていない.そのため,私たちは クェーサーの変光に着目し,ブラックホールの形成について議論する.我々のグループは,なゆた望遠鏡 NICを用いて,J, H, Ksの3バンド同時撮像を2019年から継続的に行なっている.2022年に観測された3つの クェーサー,PSO338+29(赤方偏移z = 6.66),ULAS J1120+0641(赤方偏移z = 7.09),ULAS J1342+0928(赤方 偏移z = 7.54)について測光結果を報告する.さらに,2022年にすばる望遠鏡SWIMSで観測された,ULAS J1342+0928のJ, Ksバンドの結果も合わせて報告する.その結果として,PSO338+29のJバンドにおいて, ∼ 2.0 σ程度の変光の兆候が見られた.さらに,ULAS J1342+0928のJバンドにおいて,周期が∼ 102日程 度の変光の可能性を指摘した.赤方偏移z ∼ 7では,JバンドにC IV輝線が入る.そのため,周期的な変光 について,C IV輝線を放射するBLR (Broad Line Region)の運動との関連性を調査した.BLRの公転周期は, ∼ 104日程度であり,今回観測された周期とは大きく差があるため,BLRの運動とは関係ないと結論づけ た.変光調査の性質上,誤差を小さくする必要性がある.ディザリング点数の変更,ubercalibrationなどの 検討を行なってきたが,これまでの結果では誤差が有意に小さくなることは見られなかった.
  • 石田 光宏
    2022 年 5 巻 p. 10-
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/10
    ジャーナル オープンアクセス
    長年、Be星(カシオペヤ座γ型変光星)の測光・分光観測が行われているが、未だに星周円盤の生成・消 滅のメカニズムは明らかになっていない。そこで、2018年9月から2020年3月まで、学校天文台にある小口 径望遠鏡+低分散分光器を用いて、複数のBe星の分光モニター観測を行った。得られたスペクトルから水 素輝線等価幅、バルマー逓減率(Hα / Hβ)を計算し、時間変動などを調べた。その結果、バルマー逓減 率に有意な変動がある天体を複数確認した。この現象を説明するため、「Be星の伴星が近星点を通過する ときの潮汐力で円盤がリング化する」という仮説を立てた。
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