クドアが寄生したヒラメの刺身で食中毒の発生が報告された。寄生虫対策の冷凍処理は刺身商材の商品価値を著しく損ねると考えられている。本研究ではATPのタンパク質変性抑制作用に着目しヒラメの高品質冷凍解凍刺身の製造法について検討した。ヒラメを活けしめ後,魚肉中に高濃度ATPが残った状態で急速凍結し,解凍硬直を抑制した緩慢解凍を行うことにより筋原線維タンパク質の変性が抑制され高品質刺身性状を示した。また,ヒラメミオグロビンのメト化率測定法を確立し,ATPは冷凍保存中のメト化を抑制することを明らかにした。
平成30年度論文賞受賞論文[受賞理由]ヒラメを生食として消費する際に高品質な性状で提供可能とする基礎的知見が述べられている。ATPのタンパク質変性抑制作用に着目し,冷凍解凍後にもヒラメの刺身を高品質な状態で提供可能な製造法について検討している。ヒラメを活けしめ後,魚肉中に高濃度のATPが残存した状態で急速凍結し,解凍硬直を抑制するために緩慢解凍を行うことによって筋原線維タンパク質の変性が抑制され,高品質な刺し身の性状を維持可能であることを示した。寄生虫対策のみならず,冷凍品の輸出においても貢献する可能性もあり,高く評価した。
北海道から東北太平洋沿岸の産卵場9か所において2003年から2014年に採取したニシン16標本618個体についてmtDNA調節領域の塩基配列549 bpを決定した。FSTのNJ樹は,北海道,尾駮沼,宮古湾・松島湾のクラスターを描き,本州より北海道で遺伝的多様性が高かった。東日本大震災後の宮古湾ではハプロタイプ頻度が震災前と大きく異なり,尾駮沼に酷似した。北海道では約60万年前から集団が拡大,本州では20万年程度安定していたが,最終氷期後の温暖化と一致して2万年ほど前から急減していると推測された。
平成29年度論文賞受賞論文[受賞理由] 水産重要種であるニシンの遺伝的多様性と集団構造を,広域かつ長期にわたる膨大なサンプル数と精度の高い遺伝解析手法によって明らかにした点が高く評価される。また,集団構造の地域間差,東日本大震災前後での変化,さらには地史的要因にも分析と考察が及んでおり,幅広い読者の興味を惹く論文として仕上がっている点も,非常に高く評価される。
2010年からガンガゼ類除去による藻場再生が行われている三重県早田浦に10調査地点を設け,1999年,2004年,2014年の計3回,海藻植生を素潜りによって広域的に調査した。湾奥部は,1999年にはガンガゼ類が優占する磯焼け域であったが,ガンガゼ類除去後の2014年には磯焼けから藻場の再生が認められ,ホンダワラ類や小型海藻の種数が大きく増加した。一方,湾口部では調査期間を通して藻場ガラモ場や一年生コンブ目藻場が維持され,海藻種数に大きな変化は見られなかった。
平成29年度論文賞受賞論文[受賞理由] 藻場再生が行われている三重県早田浦において,ガンガゼ除去の前後における変化を調べた結果,ガンガゼ除去により大型藻類だけでなく小型藻類が回復を示し,磯焼け状態から藻場へ回復したと考察している。本論文はガンガゼ除去による藻場再生の効果を明確に示しており,今後藻場再生の指針ともなりうるとともに,地元の漁業者や地方自治体と連携して調査した点でも価値ある論文である。
リアルタイム定量 PCR 法の原理と活用
公開日: 2007/04/03 | 73 巻 2 号 p. 292-295
有賀 博文
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論文を書くにあたって
公開日: 2010/05/13 | 76 巻 1 号 p. 72-75
小林 牧人
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水産学会とジェンダーギャップ
公開日: 2023/08/02 | 89 巻 4 号 p. 301
中田 薫
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養殖用飼料における植物性原料の利用性とその改善に関する研究
公開日: 2010/07/07 | 76 巻 3 号 p. 344-347
山本 剛史
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パルスパワーによるアニサキスの不活性化とパルス処理したアジの品質評価
公開日: 2023/08/02 | 89 巻 4 号 p. 305
鬼塚 千波里, 中村 謙吾, 王 斗艶, 松田 樹也, 田中 律夫, 井上 陽一, 黒田 理恵子, 野田 孝幸, 根来 健爾, 根来 尚康, 浪平 隆男
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