我が国では,さけます類の種苗放流は,水産資源増殖のためだけではなく,環境教育としても行われている。しかし,放流された種苗は,食う-食われるの関係,競争関係,交雑,病気の伝播といった生物間相互作用を通じて野生魚を含めた同所的な生物や生態系全体に影響を及ぼしている。種苗放流による生態系への影響を軽減するためには,放流数の再検討あるいはそもそも種苗放流が資源増殖や環境教育の目的を達成するために最良の手段かを検討する必要がある。
本研究では日本沿岸の岩礁に生育する大型海藻(コンブ類,カジメ類,アラメ類,ワカメ,ホンダワラ類),小型海藻(褐藻,緑藻,紅藻),海草(スガモ)の被度と現存量のデータを野外調査及び既往文献から収集し,9つの海域ごとに被度と現存量の関係式を求めた。その結果,各海域の海藻・海草ごとの被度と現存量の関係式が33個得られ,これらによりブルーカーボン貯留の算出時に必要となる海藻・海草藻場の現存量を坪刈りなしで算出することが可能となった。
瀬戸内海中西部の芸予諸島大島(愛媛県今治市)沖において小型底びき網で漁獲されたヨコスジフエダイ(雄34個体,雌22個体,全長259–428 mm)の生殖腺を観察した。生殖腺重量指数は雌雄ともに7月後半から8月前半に高い値を示し,2個体から吸水卵,1個体から精液が確認された。耳石の横断切片には2–12本の不透明帯が観察された。また,2022年,2025年の9月に水深2 m未満の沿岸域で32–82 mmの稚魚が12個体採集された。以上から,本種は瀬戸内海中西部で再生産していることが初めて確認された。
カジカによる放流直後のサクラマス稚魚の捕食の影響を確かめるため,稚魚放流後にハナカジカの胃内容物を調べた。放流後2週間程度までは,サクラマス稚魚を捕食しているハナカジカの割合は6割を超えていた。一方,放流後1か月以降では,ハナカジカはサクラマス稚魚をほとんど捕食しておらず,捕食が確認された場合でも,胃内容物中に認められた稚魚は最大で1尾にとどまり,ごく少数であることが確認された。