日本水産学会誌
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巻頭言
平成30年度日本水産学会各賞受賞者紹介
平成31年度日本農学賞受賞者紹介
平成30年度日本水産学会賞
  • 帰山 雅秀
    2019 年 85 巻 3 号 p. 266-275
    発行日: 2019/05/15
    公開日: 2019/05/24
    ジャーナル フリー

     サケ属魚類の生態学的研究において,生活史などの個生態学から種内間の生物学的相互作用,および気候変動などの生態系生態学を含む包括的な研究はこれまでほとんど行われてこなかった。著者は,長年,サケ属魚類の生活史,個体群動態,種間相互作用,長期的な気候変動と海洋生態系動態との関係,海域-陸域生態系の物質循環等に関する生態学的研究に携わってきた。すなわち,1)進化生態学的研究に基づく条件戦略による生活史の定義,1-6) 2)個体群の密度依存効果の実証7-9)と環境収容力の定義,10-14) 3)北太平洋各生態系における胃内容物解析と安定同位体比分析から種間の相互作用,種特異的な栄養段階と可塑的な摂餌動態の解明,15-19) 4)長期的な気候変動が海洋生態系とサケ属魚類のバイオマス動態に及ぼす影響,20-28) 5)サケ属魚類による陸圏生態系への物質輸送と生物多様性,29-38) さらに6)地球温暖化がシロザケのバイオマスと回遊に及ぼす影響21,24,26-28,36,38-39)などである。ここでは,サケ属魚類と生態系との関係に焦点を絞り,今後地球温暖化の加速が予測される中,サケ属魚類の持続可能な保全と利用のあり方にむけた生態学的研究について概説する。

  • 酒井 正博
    2019 年 85 巻 3 号 p. 276-280
    発行日: 2019/05/15
    公開日: 2019/05/24
    ジャーナル フリー

     水産増養殖において,いかに疾病の発生を防ぐかが大きな課題である。これまで,水産増養殖で発生する疾病の治療には,主に抗菌剤が用いられてきた。しかし,薬剤耐性菌の増加や食品衛生上の問題から薬剤による治療から,疾病を予防するように考えなくてはならない。

     高等動物の生体防御は,自然免疫と獲得性免疫からなっている。獲得性免疫は,T,Bリンパ球の膜上に存在する抗原受容体により,外来抗原を認識する。この抗原受容体の遺伝子は,抗原刺激によって再構築を行い,高い親和性で,抗原に特異的に認識することが出来る。しかし,獲得性免疫の成立には,通常数日が必要とされ,微生物感染等の迅速な免疫応答には対応できない。この感染初期の段階で必要となるのが自然免疫であり,主に,食細胞や液性因子によって担われている。従来から,魚類の免疫系は,獲得性免疫よりも自然免疫の方が重要であることが指摘されてきた。ここでは,自然免疫応答に重要な役割を果たす分子であるサイトカインについて遺伝子レベルでの研究を紹介し,さらに,この自然免疫応答を生かした免疫賦活剤について総説する。

  • 左子 芳彦
    2019 年 85 巻 3 号 p. 281-290
    発行日: 2019/05/15
    公開日: 2019/05/24
    ジャーナル フリー

     海洋は,地球上の生物生産やまたそれを支える環境を考える上で極めて重要な位置を占めている。なぜなら海洋は地球表面積の約70%を占めており,また海洋の平均深度が約3,800 mであることから,面積においても体積においても最も重要な地球環境である。また海洋は,赤道から両極地まで広範な地球表層環境をおおい,陸上とは異なった圧力,塩分,温度,光などの環境条件を有しているため,多様で特異な生物が生息している。また海洋には,沿岸域,外洋域,閉鎖性海域,深海域など陸域にはみられない環境が存在するため,生息する生物の生態・生理・進化において特徴的な影響を与え,独特で特異な生物が生息していると考えられる。

     さて近年次世代DNAシーケンサーの開発により,微生物を中心とした環境メタゲノムの解析が発展した結果,海洋には従来推測されてきたよりも桁違いに多い未知微生物の存在が明らかになってきた。現在もゲノム解析やメタゲノム解析によるDNAデータベースの拡大は日進月歩で,今後も驚異的なスピードで加速することは疑いの余地が無いと思われる。

     近年これらのメタゲノム解析の情報により,海洋における物質循環や生物生産において微生物の果たす役割は従来の予想よりはるかに大きく重要であることが明らかになってきた。しかし海洋微生物の99%以上は難培養性未知種であり,詳細な生理生態が不明である。そのため海洋環境の変化や富栄養化に伴う有毒・有害微細藻の異常増殖とそれに伴う養殖魚介類の毒化や斃死などの環境問題や,新たな生物資源の開拓を目指す次世代水産業において重要かつ大きな問題となっている。

     このように海洋環境には,水産業にとって深刻な打撃を与える有毒・有害微細藻の存在と共に,遺伝子資源として極めて有用な微生物も共存している。本稿では,⑴海洋微生物のゲノム情報に基づく高感度分子診断法の確立により,異常増殖により魚介類の養殖において世界的に深刻な問題となっている多様で形態分類の困難な有毒・有害微細藻の分子モニタリング法の開発と,⑵深海・浅海熱水環境から,多様かつ難培養性の新規超好熱古細菌やCO資化性好熱菌を分離し,生態,生理,生化学的特性の解明と全ゲノム解析の活用により,次世代遺伝子資源である難培養性好熱菌と耐熱性有用酵素の開発等に関する主要な研究成果について紹介する。

平成30年度水産学進歩賞
  • 北野 健
    2019 年 85 巻 3 号 p. 291-293
    発行日: 2019/05/15
    公開日: 2019/05/24
    ジャーナル フリー

     多くの魚種は,遺伝的な要因により性が決定するシステム(遺伝的性決定システム)だけでなく,環境に依存して性が決定するシステム(環境依存的性決定システム)を保持している。1) この環境依存的性決定システムにおいては,温度,pH,社会環境など,様々な環境要因で性が決定(転換)することが知られているが,この基本原理及び分子機構については未だに解明されていない。

  • 宮下 和士
    2019 年 85 巻 3 号 p. 294-296
    発行日: 2019/05/15
    公開日: 2019/05/24
    ジャーナル フリー

     昨今の人間活動の増大により,資源の枯渇が顕在化しつつある。このような背景のなか,国連環境計画が「持続可能な開発目標」を掲げ,環境,資源の持続性を考慮した社会システムの構築,移行を求めている。そして水産分野もその例外ではなく,環境(生態系など)と調和を取りつつ水産資源を持続的に活用して行くことが求められる。

     水産資源を持続的に活用するためには,先ず,それらが「どのような大きさ」で,「いつ」,「どこに」,「どれくらい」いるのかを知ることが基本となる。しかしながら水産資源は広大な海中を「立体的」に活用したり,「能動的」に移動したりするものも多く,それらを可視化することは簡単ではない。ましてや定量性を担保することは困難を極めるものとなる。

     この様な水産資源の定量的可視化を実現するための強力なツールの一つとして,音波を使った計測法,すなわち音響モニタリング手法が国内外で注目され,研究が進められている。本稿では,著者が中心となり世界に先駆けて開発・研究した音響モニタリング手法に関する成果について,その概略を紹介する。

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