逐次加入モデルを用いて月別漁獲量や月別資源量の理論式を導いた。2012–2021年の漁獲量やCPUEのデータと理論値の残差を最小にするように未知パラメータを推定した。その結果,漁期初めの資源量と1年間の加入重量の合計に対する漁獲量の割合は2013年で0.53,2021年で0.33となり減少傾向であった。パラメータ推定の結果と改良について議論した。
刺網には目合に応じた体長の魚を効率よく漁獲する網目選択性があるため,資源調査用刺網では複数の目合の刺網が組み合わせて用いられる。そこで,調査対象種の体長範囲における相対採集効率が一定となる条件を検証した。体長に対する相対採集効率は,最適相対体長R0が6.0–7.0でかつ50%選択相対体長範囲R50%が2.5–4.5のときに目合間の公比を一定に設定するとある程度一定になるが,R0が小さいとき単峰型にまたR50%が小さいとき多峰型となった。一定とならない場合の公比や目合別反数の調整などを考察した。
石垣島名蔵湾北部では,閉鎖的なラグーン状窪地のコアマモは,分布縁辺域(上限付近および下限付近)と比べて,株長が長く,地上部バイオマス・地下部バイオマスが高かったが,株密度は低かった。6月と2月とで比較すると,株密度は2月の方が高かったが,他のパラメータは6月に高かった。分布縁辺域では,株密度以外のパラメータの月間の違いが小さかった。分布中心域付近での周年調査では,夏季に最大となる株長の消長とほぼ同期して,地上部バイオマスが季節的に変化した。有性生殖は,水温が最も低い2月頃の短期間に行われた。
越喜来湾の浦浜海岸および河川等では,東日本大震災前後で環境が変化した。震災前後の仔稚魚相を比較した結果,震災後は震災前よりも総出現種数が増加し,種組成が変化したことが明らかになった。震災前と比較して,転石が増加し,海藻が繁茂するなど海岸の環境は多様化しており,仔稚魚相の変化の一因と考えられた。一方,両側回遊魚の出現や,震災前の海岸で例年出現していた定住種の経年的種数増加など,河口域に隣接する地理的特性を反映した仔稚魚相が4年後までに回復したことも明らかになった。
麻痺性貝毒で毒化したアカガイ,トリガイの毒化初期と後期の部位別毒量,毒成分を調査した。筋肉,外套膜・貝柱,鰓,内臓を分析した結果,麻痺性貝毒はアカガイでは全部位に分布し,鰓以外の部位で多い一方,トリガイでは鰓と内臓で多く筋肉では極めて少なかった。毒成分割合は両種でGTX2, 3が高かったが,アカガイでは毒化前期にも内臓以外でSTXが高い傾向がみられた。以上からアカガイでは毒成分が早期に内臓から全体に拡散しSTXへの変換が進むのに対し,トリガイでは毒の移行は内臓から鰓にとどまることが推察された。
本研究では,ステレオカメラの設置深度や撮影時刻により,計測個体数や計測平均尾叉長が変化する可能性の検証を目的に,養殖ブリ生簀内の異なる深度に同時にステレオカメラを設置して12時間の撮影を行い,計測個体数や計測平均尾叉長のパネルデータ分析を行った。その結果,ステレオカメラの設置深度や撮影時刻により計測個体数や計測平均尾叉長が変化することが示唆された。この事実は,画角の限られるカメラ計測の特徴を示しており,正確なモニタリング実施には,ステレオカメラの設置深度の慎重な検討が必要であることが示唆された。
飼育水温の違いがクロマグロ人工種苗の生残と成長に及ぼす影響を調べた。異なる水温(17, 20, 23, および26℃)での飼育試験の結果,生残率は低水温区で高くなる傾向が認められた。体サイズは低水温区で小型化する傾向にあるものの,23℃区の成長は26℃区と同等であり,飼料効率は23℃区で最も高い値が得られた。本研究の結果から,クロマグロ人工種苗は17℃以上の海域で育成可能であり,23℃付近が成長により適した水温であると示唆された。