山口医学
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最新号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
ミニ・レビュー-小西賞受賞者-
  • 岡村 誉之
    原稿種別: ミニ・レビュー-小西賞受賞者-
    2025 年74 巻2 号 p. 61-68
    発行日: 2025/05/30
    公開日: 2025/07/11
    ジャーナル フリー
     本研究では,左冠動脈主幹部(LM)病変に対する2ステント治療の最適化を目指し,心血管疾患治療における新たなアプローチを検討した.LM病変は生命予後に直結する重大な病態であり,その治療には複雑な手技が求められる.本研究では,心運動を模したLM分岐部病変モデルを新たに開発し,3D-OCTガイドと最適なステント選択による手技の標準化を試みた.このヒト病態模擬試験システムは,臨床試験の代替手段として,治療戦略の安全性と性能を前臨床で評価する新たな方法論を提供するものである.その結果,2ステント治療手技の成熟度が低い現状において,最大拡張径を有するステントプラットフォームの使用や,3D-OCTなどの先進的なイメージング技術の導入が治療の成功率を高める要因となる可能性が示唆された.この医工学モデルを用いた治療戦略の安全性・有効性評価は,今後の医療技術の発展において重要な役割を果たすと考えられ,患者に対する治療の質が向上し,心血管疾患の予後改善に寄与することが期待される.
原著
  • 田戸 朝美, 村上 智恵, 相楽 章江, 山中 聖美, 岩本 裕子, 小嶋 慶子
    原稿種別: 原著
    2025 年74 巻2 号 p. 69-75
    発行日: 2025/05/30
    公開日: 2025/07/11
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,非挿管状態の救急患者に使用した歯ブラシに付着した細菌数の実態を明らかにすることである.非挿管状態の救急患者27名を対象とした.患者のADLの状況に応じて,看護師が口腔用ジェルを用いて口腔ケアを行う群をジェル群,患者自身が洗口液を用いて口腔ケアを行う群を対照群とした.測定項目は,歯ブラシの汚染度として歯ブラシ中の細菌レベルとアデノシン三リン酸(Adenosine tri-phosphate:ATP)値を,口腔ケア前,ブラッシング後,歯ブラシ洗浄後,歯ブラシ乾燥後時点の4時点で測定した.  結果として,ATP値では交互作用を認めた(F値10.3, p=0.002).ブラッシング後のATP値は,対照群111,683±68,311RLUで,ジェル群60,786±48,960RLUよりも有意に高かった(p=0.003).歯ブラシ洗浄後のATP値は,対照群297±582RLUでジェル群924±1,098RLUよりも有意に低かった(p=0.004).歯ブラシ乾燥後のATP値は,対照群42±48RLUジェル群48±54RLUで両群とも清浄が保たれていた.
  • 村上 京子, 沓脱 小枝子, 伊東 美佐江, 末廣 寛, 伊藤 浩史
    原稿種別: 原著
    2025 年74 巻2 号 p. 77-93
    発行日: 2025/05/30
    公開日: 2025/07/11
    ジャーナル フリー
     遺伝性疾患の児に対する検査・治療は進歩しているが,遺伝性疾患の特徴には共有性があり他の家族員の遺伝情報に繋がる可能性があるため家族ケアが重要である.遺伝性疾患の児をもつ両親に対し,夫婦サブシステムに働きかける家族ケアの実際と調整における課題を明らかにするために文献検討を実施した.
     医中誌Webを用い,キーワードは“遺伝性疾患”と“家族”とし,2005年以降の文献を検索した.医療者が両親に継続して働きかけを行っている事例を対象文献とし,グリーフケアの関わりは除外した.その結果,23文献26事例が対象となった.大半が2015年以前に発表され,本数も少ないことがわかった.鈴木・渡辺の家族看護アセスメント/支援モデルを分析の視点に用いてメタスタディを行ったところ,遺伝性疾患の児を持つ両親に対する家族ケアにおいて,調整を必要とする内容には【治療の意思決定支援】【わが子の受容・愛着形成の支援】【在宅育児への支援】【遺伝カウンセリングにおける家族ケア】が挙がった.
     遺伝医療における家族ケアの視点より両親への支援について,疾患特性と個別性を考慮し,両親の遺伝性疾患に対する理解を促す,遺伝性疾患の児をもつ両親それぞれの思いの表出を促す,遺伝性疾患の児を含めた「家族の生活」を考える,多職種連携と継続的な関わりができる環境を整備することが重要であると示唆された.
報告
  • 小川 仁志, 田中 愛子, 永田 千鶴, 後藤 みゆき
    原稿種別: 報告
    2025 年74 巻2 号 p. 95-102
    発行日: 2025/05/30
    公開日: 2025/07/11
    ジャーナル フリー
     人生の最終段階のがん看護において,最期までその人らしく人生を生き抜くケアを提供することは重要であるが,そのケアは容易ではない.
     そこで著者らは,よりよいケアの事例をモデル化し,そのケア全体の実像を分かりやすく構造化する方法として,「実像構築」を開発した.また,患者の希望を実現した事例を,実像構築の分析手法を通して展開した.
     実像構築は,事実,外部,根源を記述したうえで,その3つを統合したものを,全体のケアリングモデルの命名として表現するものである.この方法を用いて個々の事例をまとめることで,そのケアリングモデルの特徴を明らかにすることができるとともに,類似のケースにおける活用が容易になる.
     また,今後モデルが蓄積されていくと,命名した言葉の類似性に基づきモデルをカテゴリー化したうえで,各モデルの事実,外部,根源の枠を超えた分析が可能になる.その結果として,ケアリングに重要な新たなキーワードを見出すことや,統合した新たなケアリングモデルを創出することが可能になるものと思われる.
症例報告
  • 古谷 彰, 浦田 洋平, 白石 智世, 福留 唯里加, 竹内 雅大, 小野田 雅彦, 岩村 道憲, 井口 智浩, 河野 和明, 加藤 智栄
    原稿種別: 症例報告
    2025 年74 巻2 号 p. 103-110
    発行日: 2025/05/30
    公開日: 2025/07/11
    ジャーナル フリー
     症例は57歳の男性.急性腹症の精査での腹部単純CT検査にて消化管穿孔と診断され当院に救急搬送された.上部消化管内視鏡検査の結果,十二指腸球部に広範囲に及ぶ潰瘍と前壁に穿孔部を認めたため,同日に肝円索を用いた腹腔鏡補助下穿孔部閉鎖術を施行した.術後,間欠的な軽度の貧血進行を認めていたが,術後5日目に大量下血とともにショック状態となったため,緊急上部消化管内視鏡検査を施行したところ十二指腸球部後壁の潰瘍底に隆起した胃十二指腸動脈の仮性瘤からの出血であることが判明した.内視鏡的処置は困難と判断し,仮性動脈瘤近傍の十二指腸粘膜にクリップでマーキングした後に血管造影室に搬入した.動脈造影でクリップと一致する部位に胃十二指腸動脈仮性瘤を確認し,コイル塞栓術にて止血した.その後の再出血はなく退院し,術後2ヵ月目の内視鏡検査で潰瘍は治癒していた.十二指腸潰瘍穿孔の術後に胃十二指腸動脈仮性瘤の十二指腸穿破を来した症例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
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