全国の69病院から大腸菌, 肺炎桿菌の臨床分離株を収集し, 11種の抗菌薬に対する感受性を調査した。
1986年と1987年の2年間に臨床材料から分離された大腸菌4,421株, 肺炎桿菌2,825株 (主に, 尿, 喀痰, 膿から分離) を対象とし, 日本化学療法学会標準法によりMIC (接種菌量108CFU/ml) を測定した。実験に供した抗菌薬はペニシリン系2剤, セフェム系7剤, アミノ配糖体系2剤である。
両菌種の90%以上の株はCeftizoxime (CZX), Cefotetan (CTT), Latamoxef (LMOX), Cefotiam (CTM), Cefmetazole (CMZ), Gentamicin (GM), Netilmicin (NTL) に感性, 約80%の株がCefazolin (CEZ) に感性を示し, Ampicillin (ABPC), Piperacillin Cephalothinにはほとんどの株が耐性であつた。
大腸菌の場合, 約90%の株がCZXの0.20μg/ml, LMOXの0.39μg/ml, CTTの0.78μg/ml, CTM, NTLの1.56μg/ml, CMZ, GMの3.13μg/mlで発育が阻止された。肺炎桿菌の場合も, ほぼ同様の感受性を示した。
由来臨床材料別の両菌種の抗菌薬感受性には, 大腸菌の場合にABPCで, 胆汁由来株が他材料由来株よりMIC100μg/ml以上の株の比率が小さく, 6.25-12.5μg/mlの株の比率が大きかつた以外は, 大きな差は認められなかった。
1980年から1987年までの大腸菌, 肺炎桿菌のABPC, CEZ, CMZ, GMに対する感受性には年次的変動はなかつた。
以上から, いわゆる第2, 第3世代セフェム系とアミノ配糖体系薬剤は, 大腸菌又は肺炎桿菌による感染症治療に有効な薬剤と考える。
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