Ⅰ はじめに「小産権住宅」(中国語で「小产权房」)は、中国における独特な社会現象とも言えよう。急速な都市化プロセスに伴い、この問題はますます敏感で拡大化され、中国における公共政策の分野で回避できない難問題となりつつ、社会の注目が集まっている。
Ⅱ 研究サーベイまず、「小産権住宅」の定義や問題の由来を探り、その影響の広さと深刻さを明らかにし、さらに社会制度の角度から原因を分析する。その次、従来の研究を紹介し、その脈絡を把握する上に今後の研究方向を示そうとする。
全体から見ると、既存の研究は主に二点に集中されている。一つ目は法学の視点から、現在の法律の枠組に「違法」とされた既存の「小産権住宅」を「合法化」する道を探る。二つ目は、経済学の角度から、とくにゲーム理論などを用いて、市場化解決のルートを摸索する。いずれも居住者に焦点を当てる実証研究は少なく、特に通常の分譲住宅に住む住民との比較研究は見当たらない。
Ⅲ 北京における研究事例の紹介1、研究区及び研究方法2014年10月~2015年4月に、北京市
昌平区
のアーバン・フリンジ(urban fringe)に立地する典型的な「小産権住宅」団地及びその付近にある分譲住宅団地に行ったアンケート調査に基づき、住民の実情を把握したい。
2、分析結果「小産権住宅」の住民は、以前の居住地、家族構成や社会経済的な地位、さらに居住に対する満足度などに関して、分譲住宅団地の住民との間に、共通点があるにも拘らず、相違点も明らかであると判明された。
3、討論(1)「小産権住宅」の住民に関する基本的な特徴住宅の所有区分と世帯の戸籍状況、家計支持者の就職先や、勤務地などについて、「小産権住宅」と分譲住宅は類似している。特に注目したいのは、約三分の一の住宅は借家に転じている。家計支持者の学歴や負担できる住宅の値段など世帯の社会经济状况には、顕在的な相違が認められたが、その一方、「小産権住宅」に住む家庭の全ては社会的な弱者に集中するわけではない。以前の居住地において、「小産権住宅」は、分譲住宅と同様に、4割弱は五環以内の中心市街地に集中した。それを除き、分譲住宅には北京市以外の地方から来たのが多いと違い、「小産権住宅」は北京市内の郊外地域から来たのが多い。また、家族構成をみると、「小産権住宅」は約三分の一が夫婦二人っきりの家族であり、分譲住宅には三分の二が子供のある世帯から構成される。両者には顕在的な相違がある。
(2)検証待ちの推測現地のフィールド・ワークおよびアンケート調査の経験より、以下のような推測ができる:
親子近居も「小産権住宅」を購入する一つ可能な理由;「小産権住宅」の持ち主はリスク意識が比較的に低い可能性がある。
Ⅳ 結論北京における郊外住宅地で行ったアンケート調査を用いて、「小産権住宅」と分譲住宅の比較研究は以下のように初歩的な結論をつけたい:
①地理的に隣接する「小産権住宅」と普通の分譲住宅は共通点が多く、外観で簡単に区別できない;②相違性から注目して、普通の分譲住宅の所有者との間に社会経済の面で格差の存在が認めらたが、「小産権住宅」の持ち主は、決して全ては低所得者ではない;③以前の居住地や、家族の構成などについて、両者の相違は意味深く、今後の研究方向を示唆したと考えられる。
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