目的:通常の歯周病治療を施行しても病状が進行する治療抵抗性歯周炎が,わずかであるが存在する.このような歯周炎には,スケーリング・ルートプレーニング(SRP)と抗菌療法との併用が,治療法の一つとして選択されてきたが,細菌検査法の確立・普及が不十分なこと,原因細菌が不明であるなどの理由から,根拠は乏しいのが現状である.本研究では,治療抵抗性歯周炎に対する抗菌療法の有効性を検証するために,臨床パラメーター,細菌数の変化を検討した.材料と方法:被験者は全身的に健康で,初診より6カ月以内に歯周病治療・抗菌薬服用の既往がなく,16歯以上の現在歯がある者とした.病態は,ブロービング深さ(PD)4mm以上の部位が20%以上,歯槽骨吸収率30%以上の中等度以上の歯周炎患者であった.初診時に歯周組織検査(PD,プロービングによる出血:BOP,歯肉炎指数:GI,歯の動揺度),および細菌検査の試料として唾液を採取した.細菌検査では,総細菌数Porphyromonas gingivalis菌数,Aggregatibacter actinomycetemcomitans菌数をreal-time PCR法にて測定した.歯周基本治療を7〜10日間隔で施行し,SRP終了後4週に再評価検査と唾液採取を施行した.PD 4mm以上の残存部位に対して再SRPを施行,再SRP後4週に再評価検査,唾液採取を施行した.この時点で,BOP部位率が初診時の30%以上残存している被験者を,治療抵抗性歯周炎被験者(
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ロマイシン投与群)として抗菌薬投与へ移行した.一方,BOP部位率が30%未満の被験者を治癒群とした.結果:31名の被験者のうち,5名が
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ロマイシン投与群となった.再SRP後4週までのPD, GI, BOPは,治癒群が
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ロマイシン投与群より良好な改善を示した.
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ロマイシン投与後は,BOPにおいて,
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ロマイシン投与群が治癒群より良好な改善を示した.さらに,
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ロマイシン投与群では,再SRP後4週以後でも総細菌数に対するP. gingivalis菌数の割合の減少が確認された.結論:以上の結果から,SRPに加えて
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ロマイシンを投与することは,治療抵抗性歯周炎の治療に対して有効である可能性が示唆された.
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