近年, 学校教育における「国際理解」「異文化理解」が注目されるようになっているが, 日本の音楽科において「異文化」教育の問題点が議論されることは少ない。そこで本報告では, 日本の音楽科に「異文化」が導入される直前の1984年から1985年にイギリスで交わされた「異文化理解」のあり方を巡る論争を取り上げ, 「異文化理解」教育の問題点と基本的な視点を提示したい。この論争は, イギリスの学術雑誌においてK. スワニクとG. ヴァリアミー及びJ. シェファードにより交わされた。「音楽」と認識されないものを「音楽」の授業で取り上げること, また「学校」という場で「異文化」を扱うことの可能性など, 「異文化」を導入する際に浮かび上がってくるはずの問題を示唆するところに, この論争の重要性がある。彼らの論争は日本における「異文化理解」教育にも有効な示唆を与えると思われる。
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