抄録
音楽療法は欧米を中心に発展してきたが,近年日本でも関心が持たれ,音楽療法士という専門のトレーニングを受けたセラピストが生まれている.活動の場は主として高齢者施設である.緩和ケアなど,音楽療法が重要な役割を果たす医療領域が存在する.しかし,医療の場に音楽療法を導入するためには,国家資格や医療職としての教育など,様々な問題を解決しなければならない.一方,1994年に制定された音楽振興法の趣旨に基づいて,生涯学習音楽指導員が地域社会で活動している.これら二つの新しい動きは,これまでの音楽との関わりとは異なり,音楽の持つ根源的な力を,人間がより良く生きるために活用しようというものである.