モノやサービスのコモディティ化が進む今日、サービスデザインやデザイン思考などの言葉が往き交い、ユーザ視点に立って考えられたモノやサービスが、そして、広告においても、ユーザ、つまりは広告の受け手中心に考えられた広告というものが求められている。そのような中、ユーザ視点に立ち、ユーザの状況、行動、感情のプロセスの理解を促すツールである
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を活用することで、広告コミュニケーションの本質に迫り、これからの時代に即したユーザ中心の新しい広告のあり方を提示できるのではないかと考える。本研究は、その前段階として、広告デザイン演習の授業における
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の有効性を明らかにすることを目的とする。
教育を通した実践的研究として、昭和女子大学にてデザインを学ぶ学生に対し、
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を用いた広告ポスターのデザインの課題を課した。その結果、学生の作品群は、実現させる価値をも十分に感じさせる、リアリティのあるユーザ像とユーザのインサイトの描写が数多く見受けられ、
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の可能性を大いに感じさせるものであった。本文においては、3名の学生作品を紹介する。この授業は、学生にとっては、ポスターデザインが単なるデザイン表現の1つであるだけでなく、商品/サービスとユーザを繋ぐコミュニケーションであるという広告の本質に触れ、体感する機会となったと言える。日本の広告教育というものが停滞していると言える現状で、今後の広告教育においても大いに意義のあることであったと考える。
また、広告教育のみならず、
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より感情曲線を作成し、そこから媒体計画に展開することも含め、広告の実務における
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の活用もまた、これからのユーザ中心の広告の実践において大きな可能性であると推察する。
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