本研究の目的は,近赤外分光法(以後近赤外法という)による緑茶の化学成分値の非破壊分析法を確立するとともに本法を緑茶の迅速品質評価法に応用することであって,次の結果を得た。
(1) 緑茶の近赤外スペクトル(1100~2500nm)は従来報告されている小麦,大豆などと異なり,特に2000~2220nmの範囲で特徴的な形状をした。
(2) 緑茶の近赤外スペクトルは強弱合わせ約30の吸収からなり,乾のりのスペクトルと比較することにより緑茶に特有な吸収を考察し,1696nm付近における吸収はカフェインの-CH3基によるものと判断した。
(3) スペクトルの吸収の強さと全窒素含量との相関を求めた結果,相関係数はたん白質,遊離アミノ酸・アミド類及びカフェイン由来の吸収帯で正,炭水化物由来の吸収帯で負といずれも高い相関を示した。
(4) 1978, 2018, 1442及び1338nmの波長における2次微分スペクトルと全窒素含量との重回帰分析の結果,重相関係数0.995,回帰の標準誤差0.072%を得た。
(5) 31個の未知試料を用いて得られたキャリブレーションの精度を検定し,近赤外法が,実用上緑茶の全窒素含量分析に使いうることを確認した。
なお,本研究は茶業試験場製茶部化学研究室と食品総合研究所食品工学部計測工学研究室との流動研究による。
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