草地の強害草のエゾノギシギシ(以下Rx)は,多量の種子を生産して旺盛に繁殖するとされている。これに関連して,地中に蓄積している種子が問題となるが,草地の埋土種子はあまり調査されていない。富士山西麓においてRxの分布が多い草地と少ない草地,計8草地の埋土種子集団を調査し,それとRxの分布,土壌条件や埋土種子相互との関係を考察した。1)Rx,ハルタデ,メヒシバ,など14種の雑草種子が見出された。ただし,イヌビエの種子は大部分が枯死していたので,統計処理および考察から除いた。2)面積1m^2,深さ10cmの土壌中の種子の平均粒数は,種および草地による変動が大きく,メヒシバが2,993±5,212で最も多く,アキメヒシバが13±33で最も少なかった。Rxは305±297でやや多い方であった。3)Rxの頻度とRxの埋土種子粒数とは相関が高く,Rxの多い草地ほど多くのRx種子を土に蓄積していた。4)Rxの多い草地には,メヒシバ,シロザ,ハコベなどRx以外の富栄養性雑草の種子も多かった。反対に,アキメヒシバ,ツボスミレ,タチイヌノフグリなどの種子は少なかった。5)Rxが多い富栄養の草地には,埋土種子の種類と粒数が多く,反対に貧栄養の草地にはそれらが少ない傾向がある。6)これらから,Rxの防除について,土壌の過度の富栄養を避けること,Rxを除草剤で防除した場合には牧草の播種を行って,Rxが枯れてできた裸地を速やかに埋め,雑草の埋土種子の発芽・生育を抑制する必要を指摘した。
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