抄録
日本列島の組織的農業は,弥生時代から古墳時代に広まった稲作を中心として発展した“草肥農業”と牛馬産を中心とした“草地農業”に始まる.そして,古代から近世に至るまでの日本の表土は,時代の重要農業資源であった草に覆われていく.近代になり生産管理を目的とした管理技術の高度化と工業製品の集約的利用が始まり,表土の育成や植生の管理は忘れさられつつある.一方,今世紀の主要課題は,持続可能な表土の保全と利用が国際規範となり,表土と生物多様性に関わる生態系サービスを後代にわたって引き継いでいくことにある.欧米と比べて年間日射量と雨量に恵まれ,寒暖の差が激しく,地形が複雑な我が国土においては,今一度列島における表土の改善と利用の時代的変遷を振り返り,その流れのなかで,今日のずさんに利用または取り扱われている表土管理について再考することが必要である.