目的:持続的肝門部一括遮断による肝切除時の虚血は術後肝不全の一因である.虚血を避けるため門脈動脈化肝灌流を行い, 流量が総肝血流量の25%では比較的良好な肝保護効果があった.今回は手技と出血の制御を容易にするため, 流量を15%に減量した.減量により肝保護効果の減弱が予想され, 肝虚血障害に効果がある
カルシウム拮抗剤
を併用し, 比較検討した.
対象・方法: 18頭の雑種成犬を用い, 非投与群 (C群), diltiazem投与群 (D群), nicardipine投与群 (N群) に分けた.門脈動脈化流量は総肝血流量の15%に設定した.ローラーポンプを用いて, 門脈-下大静脈バイパス下に, 右大腿動脈から動脈血を門脈本幹に120分間灌流した.
カルシウム拮抗剤
は開始30分前から持続的門脈内投与した.
結果: 平均動脈圧は全群で低下したが, D群で変化が軽度であった. 門脈圧は全群で変化なく, 門脈血管抵抗はN群でC群より低かった. 肝酸素運搬, 消費量は3群間で差はなかった. ATPはすべての群で低下したが, 有意差はなかった. AKBRも3群とも低下したが, C群の平均はLFPVA120分値で, 0.4以下まで低下し, D群より有意に低下した. 組織学的には
カルシウム拮抗剤
投与群で, 肝実質細胞障害が軽度で, 類洞内皮細胞は保護された.
考察:
カルシウム拮抗剤
を併用した低流量門脈動脈化肝灌流は肝エネルギー代謝, 肝循環動態に対して保護効果があることが示唆された.しかしながら
カルシウム拮抗剤
の作用により, その効果に若干の差があった.
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