古田京太郎
1)は九州中北部低山帯のモミニシキミ(モミを欠き落葉広葉樹優占の型),
クマシデ
ニコガクウッギ,ブナニスズタケの3群集を区別した。この3群集からシキミ,イヌガヤ,ブナ,ミヤマシキミ,コガクウツギ,スズタケ,ツルキンバイなど22種の林冠,林床の植物を社会学的にまた生態学的に主要なる種について,浜田富雄
2)のおこなった方法で,葉の横断面における表皮紐織,同化組織,細胞間隙,葉脈の各組織別,同化組織については葉緑体,細胞質,細胞膜,液胞の条要素別の比率を求めた。その他直接測定しなかった種に対しては,その生活形に対する平均値を適用した。
この組織比率を群集に短して適用するため群集組成表(古田の表-2)の種の総合優占度と乗じて,各階層ごとに集計した。顕微鏡下における組織比率はこうして群実に対する生態的な組織優占度とすることができる。この場合階層は単なる林分の高さの区分でなく相互に関係をもった社会的構造であることはいうまでもない。
またその森林生態的意義を考察するために9燗の生態群を温度,水湿,人類文化の強弱に区分して考察を試みた。その結果丘陵帯に接するモミニシキミ群集では,細胞間隙に富み,同化組織の液胞が強化され,葉は厚いことが特微的で,階層においては亜高木層がよく発達している。反対に山地帯に接するブナニスズタケ群集は低木層がよく発達し,葉は薄く,葉脈と同化組織内の葉緑体が強化され,
クマシデ
ニコガクウツギ群集では,その中間であった。生態群を通じて考察すると,3群集は入為の影響,水湿に多少の差はあるが,これら群集は高度すなわち温度で分化した植物社会で,その解剖的特徴はモミニシキミ群集では,葉の越冬による長期宿存に対する適応であり,またブナニスズタケ群集では積雪に対する林床の適応と考えることができる。
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