森林がもたらす生態系サービスの一つである山菜・キノコ採りについて,天然林が卓越する福島県只見町を対象に,複数集落全戸への質問紙調査,のべ17名の採取者への2年間にわたる採取日誌調査,聞き取り調査を併用し,採取活動の実態を定量的に捉えるとともに,山菜・キノコの供給からみた経済価値を試算した。その結果,ブナ林や渓畔林,雪崩草地・低木林などの多雪山地のモザイク状の植生を場所や時期を変えつつ利用して多種類の山菜・キノコを採取している実態が捉えられた。世代や性別で差があるが60代以上を中心に現在も頻繁に採取が行われていた。採取種別の一日あたり平均採取重量や単価および,町全体での性別世代別の推定採取日数を掛け合わせて自家消費や贈答を含む経済価値を試算すると,山菜・キノコ採りそれぞれ少なくとも数千万円以上の経済価値が毎年発生していると推定された。採取活動は食材のみならず楽しみ(文化的サービス)としても重視する人が多く生態系サービスはより大きいと推察された。
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