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でキャッシュレス決済を促進する動きが広がっている。2019年における
日本のクレジットカード
、デビットカード、電子マネー決済合計額の民間最終消費支出に対する比率は27%であった。
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政府は、このキャッシュレス決済比率を、2025年までに40%にする目標を掲げている。本論文の目的は、キャッシュレス化を推進するために必要な要素を検証することである。具体的には、キャッシュレス化で先行する米国の状況を踏まえて、特に
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においてキャッシュレス化を推進するために必要な要素を考察する。キャッシュレス化を推進するためには、その国の政策、消費者の行動、加盟店の動向、金融機関等の対応の4つの視点から見ていく必要がある。本論文では、日米比較を行いながら、特に消費者の行動と金融機関等の対応に着目する。
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のキャッシュレス決済は、
クレジットカード
の利用が中心であり、米国との共通点がある。しかし、
日本のクレジットカード
は、マンスリークリアーでの利用が多く、
クレジットカード
事業での利益貢献は米国ほど大きくない。また近年では、新しい支払い方法が登場しており、モバイル支払い等が増加している。このような新しい支払い方法の多くは、消費者の利便性を向上させているが、必ずしも収益貢献につながっていない。
米国は、キャッシュレス社会が進展しており、主要先進国のなかでも
クレジットカード
の利用比率が高い。米国における
クレジットカード
の利用拡大は、消費者信用の拡大を通じて個人消費支出を押し上げ、経済成長を支えてきた。米国におけるキャッシュレス社会は、個人の消費活動を促進する
クレジットカード
利用の拡大と、そこから収益を生み出そうとする金融機関の活動があわさって進展してきたのである。実際、米国の大手金融機関は、
クレジットカード
事業を中心に、年間2,000~3,000億円の税引前利益を上げている。
本論文では、キャッシュレス化を推進する要素として、決済を手掛ける金融機関等の持続的な利益計上が必要であることを明らかにする。
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におけるキャッシュレス化の推進は、金融機関等の持続的な利益計上が必要な段階に入った。本論文の貢献としては、米国等との比較を行いながら、
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固有の状況を踏まえたうえで、キャッシュレス化を推進するための要素を提示することがある。特に
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の場合は、キャッシュレス決済を手掛ける金融機関等の低収益性が問題である。本論文が、
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におけるキャッシュレス化のさらなる推進に貢献できれば幸いである。
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