養育行動とは子の生存する可能性を高める行動であり、新生児の心身発達においてもっとも重要な要素の一つである。養育行動にはオキシトシンというホルモンが関与することが知られており、ヒトにおいては親行動(Feldan et al.,2010)や信頼行動の変化(Kosfeld et al., 2005)、サルにおいては経鼻投与による配偶者選好の変化(Smith et al., 2009)、子に対する寛容度の変化(Saito & Nakamura, 2011)に関わっている。
ヒトでもオキシトシンと養育行動等の社会性に関する研究は増えてきているが、オキシトシンが行動に影響を与えるメカニズムは不明である。霊長類における詳細なメカニズムの検討には、サル類を対象とした研究が不可欠である。南米の小型ザルである
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は、霊長類の中でも珍しくヒトに近い家族形態を持ち、母親のみならず父親や兄姉も子育てに参加する。
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を対象に、養育行動とオキシトシンの関係を調べる目的で、周産期における末梢オキシトシン変動を調べた。
最近、
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ではオキシトシンのアミノ酸配列が一般的哺乳類とは異なっていることが報告された(Lee et al.,2011)。そのため、まず
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と同配列のオキシトシンを化学合成し、既存の測定系の妥当性を確認した。一般的哺乳類のオキシトシン溶液と
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型のオキシトシン溶液の濃度変化に伴う吸光度の変化には違いが見られた。そこで、
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型のオキシトシン溶液に最適なスタンダードを決定し、濃度曲線を得た。この測定系を用いて、繁殖ペア6組(計12頭)を対象に、周産期におけるオキシトシン濃度の変化を検討した。その結果を報告する。
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