1.はじめに本研究は,都市内部におけるCVSの立地展開を明らかにすることを目的としている。都市内部における小売業は都市の内部構造を明らかにするための指標とされてきた。そうした研究の中でも,個別小売業の分布パターンを検討する研究は小売構造におけるサブシステムを検討する研究として位置付けられる(伊藤1982,林1977 など)。こうした研究の中で,
コンビニエンスストア
(以下CVS)を扱った研究は相対的に蓄積が少ないといえる(箸本1998 など)。しかし,CVSはその商品構成,経営形態等の特徴から,従来検討されてきた低次小売業とは異なる立地パターンを形成していることが予想され,その立地を検討する余地のある業態であると考えられる。2.研究方法 本研究では北海道札幌市を研究対象地域とし,セブンイレブン,ローソン,
サンクス
,セイコーマートの4チェーンを事例店舗とする。研究の流れであるが,まず札幌市における事例企業の店舗数と分布を時系列的に概観し,次に札幌市の最高地価点から半径1kmごとに15_km_まで設定した距離帯別の店舗数の推移を分析する。続いて昼間・夜間人口との関連を分析した後,社会経済的指標との関連性を要約して把握するために,行要素に各CVS店舗,列要素に各種指標を変数とする因子分析を行う。 なお,CVSに関するデータはアイテマイズ編『日本の総合小型店チェーン』,人口・商業指標に関するデータは(財)統計情報センター発行の『地域メッシュ統計 平成7年国勢調査,平成8年度事業所・企業統計調査のリンク』,札幌市編『札幌市の地域構造』を用いる。3.結果 分析の結果として次のような知見が得られた。札幌市においては,いずれのチェーンも夜間人口の多い都心から3km_から_7kmの距離帯を中心に出店が始まった。また、年次が進むにつれて,一部のチェーンは通勤人口が集中する最高地価点周辺のオフィス街に重点的に店舗を増加させており,一方,どのチェーンも夜間人口の絶対量は少ないものの,人口に対する小売業の割合が少ない郊外へと店舗網を拡大した。 なお,発表の際には札幌市における既存の商業構造とCVSの立地展開との関連性についても検討を加え,その結果を報告する。文献伊藤 理 1982.大都市における小売商業の分布と地域構造_-_福岡・札幌市の比較考察_-_.地理学評論 55;614_-_633.奥野隆史・高橋重雄・根田克彦 1999.『商業地理学入門』東洋書林.根田克彦 1999.『都市小売業の空間分析』大明堂.箸本健二 1998.首都圏における
コンビニエンスストア
の店舗類型化とその空間的展開_-_POSデータによる売上分析を通じて_-_.地理学評論 71A;239_-_253.橋本雄一 2001.『東京大都市圏の地域システム』大明堂.林 上 1977.名古屋市における小売業の地域的分布とその推移.経済地理学年報 23;3-29.Guy,C.M.1994 Grocery store saturation :has it arrived yet ?.International Journal of Retail and Distribution Management, 22,3-11.
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